2004年12月14日、第1回企画制作会議から上演まで約1年間、合同での全体ミーティングと各担当者同士の度重なる細部にわたっての打ち合わせで骨子を固めていった。第4回制作会議から学生有志も参加した (写真1)。また、学内ではプロジェクト参加者の意思疎通を諮るためのミーティングも必要に応じて行った。
3-1 採寸
衣装制作を行なうには、オーダーメイドである以上、オーディションで選ばれた出演者一人ひとりの採寸と骨格を知ることが不可欠である。現在までに学生たちは他者の採寸を行った経験がない。まして初めて会った人の部位を下着を着けた上から30箇所以上も測定するのである。 手順として、学生たちが緊張しないように、7名のグループに分かれ採寸を行った。最初は戸惑っていたようだが、慣れるにしたがって手順もよくなってきた。これから顔が見える人たちの衣装を制作していくのだという決意が学生たちにみなぎっていた(写真2)。
3-2 衣装デザインの選考
衣装のアイテムも決まりそれに伴ってデザイン画を学生から公募した。また演出家、芸術監督などと素材・色・スタイリングの検討も行った。衣装デザインのイメージとしては、当時の衣装ではなく、現代的なイメージで役柄のキャラクターを表現するデザインとし、4年生、3年生、2年生のデザインを採用した。そして、舞台装置制作担当者との背景等の打ち合わせを行った上で、さらに修正を行いデザインを決定した (写真3)(写真4)(図1)(図2)(図3)(図4)(図5)(図6)(図7)(図8)(図9)(図10)。
3-3 衣装制作はグループワーク
8月26日、夏休みには入っているが、制作に向けて参加学生のミーティングを行う。制作は希望アイテム別にグループ化し、同学年同士や上級生をグループリーダーに、下級生がそれぞれ分かれてグループワークできる体制を組んだ。
3-4 トワルでの立体裁断
グループワークをするには、グループ内でのコミュニケーションが大切である。制作の前にグループミーティングをして役割分担を行った。デザイン画のイメージに合わせて、まずボディによるトワルでの立体裁断を行った。出演者の採寸を行っているので、極力その体型どおりにボディの補正を行った。
出演者の仮縫いも一度では不可能なので、稽古をしている場所に出向いたり、学校に来ていただいたりしながら進めた。9月17日から始まったトワルでの仮縫いは、素材を念頭に置きながらシルエット、ボリューム、ディティールなどのバランスを演出家や芸術監督、出演者たちと検討しながら修正し、パターンの作成に入った (写真5) (写真6) (写真7) (写真8) (写真9) (写真10) (写真11) (写真12) (写真13) (写真14) (写真15) (写真16) (写真17) (写真18) 。
3-5 素材収集
衣装制作では、先ず素材購入しておくべきなのだが、用尺の見積もりが難しい。制作アイテムにより生地の風合いや、色のコーディネートなどの決定にも時間がかかる。
パターンを作りおおよその用尺を見積もり、10月1日に各グループ代表の学生たち11名と大阪の船場界隈へ素材購入に行った。 船場は古くからの繊維の問屋街で、小売店より安価で購入することができ、ほとんどの素材がここで揃った。副素材の問屋も多く、学生たちも授業での課題制作を行なう上でもこのような生地の問屋街を知っておくことは必要である。素材を探している学生たちの目は、きらきらと輝いていた(写真19) (写真20)。
3-6 本縫いと再仮縫い
各グループによって進行状況は異なるが、タイムスケジュールに添って各グループの作業を進めていった。
トワルでの仮縫いが終わると、パターン制作、生地の裁断、本縫いに入っていく。本縫いの段階でもトワルでの仮縫いと素材感が違うことが多い。学生側と出演者のスケジュール調整の難しさを感じながらも、縫製途中での雰囲気を確認するために出演者に会って仮縫いを行った。
衣装制作は、夏休み終了後の10月からで、後期課題制作の合間をぬっての制作だったが、それぞれが工夫し進めていった。本作品は、ファッションショーの作品ではなく、歌ってダンスを行うミュージカルの衣装である。いかにその役柄にあった、また動きやすい舞台衣装を作るか。出演者の意向を組みながら何度かの細かい修正も加えつつ制作していった。
「シンデレラ」と「王妃」は、ダブルキャストであるため、体型もそれぞれ違う。当初、2サイズを制作する予定であったが、時間的、物理的にも無理があり、1サイズの制作で、副素材の工夫により出演者に着用してもらうことになった (写真21)(写真22)(写真23)(写真24)(写真25)(写真26)(写真27)。
3-7 プレコンサート
2005年10月29日(土)、「シンデレラと魔法の靴」の公演を前に神戸市長田区の「シューズプラザ」において出演者によるプレコンサートが開催された。デザイン画の展示と作品のプレゼンテーション。本校の学生代表は、各衣装のデザインコンセプトを発表し、衣装制作にかける意気込みが感じられた(写真28-1)(写真28-2)(写真28-3)(写真29)(写真30)。
3-8 スタッフTシャツ制作
制作会議の中で、スタッフ共通のTシャツを作ろうという話が急浮上し、2年生と1年生の有志が「シンデレラ」のロゴ入りTシャツを105枚制作した。当日関係者全員が着用し、本プロジェクトへの熱い思いが伝わってきた(写真31)。
3-9 リハーサル
2005年11月19日(土) は、リサーサル。出演者の衣装合わせには各制作担当の学生が当たり確認作業、細かい修正やまとめなどを行なう。エントランスではデザイン画の展示作業。役割分担の作業で皆よく動く。リハーサル開始は少々遅くなったが、無事終了した(写真32)(写真33)。
3-10 本番
2005年11月20日(日)は、待ちに待った本番の日。 公演会場である神戸市長田区の「ピフレホール」にスタッフ集合。着付けのサポートや本番前の衣装の最終チェックを行う。学生たちの中には、上演中も針と糸をもって緊張した様子で舞台袖に控えていた者もいた。上演は13:30と17:30の2回。420人近い座席の入場チケットは、公演前にはすでに完売しており、2回とも満席であった。
公演終了後、学生たちの顔には、最後までやり遂げたという充足感と喜びが表れており、長く辛かったことも吹きとんだ様子が伺われた(写真34)(写真35)(写真36)(写真37)(写真38)(写真39)(写真40)(写真41)。