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5 まとめ

 以上、「小祠の分布と配置」、「建築形態」、「祭神」、「吉祥文様」の4つの視点から考察してきたが、これらの視点は以下のように、相互に密接な関わりがあることがわかった。

  • 「小祠の分布と配置」と「祭神」の関係をみると、院落ごとにアイストップの位置に土地神を、入口脇に門神をおく原則が窺え、ともに燈火としての機能的な役割を果たしつつ、信仰上の位置づけも与えられていることがわかった。
  • 「小祠の分布・配置」と「建築形態」の関係では、有力者が居住した主要・重要な院落ほど凝った意匠の小祠が設けられる傾向がみられた。
  • 「祭神」と「建築形態」及び「吉祥文様」の関係をみると、建築の規模が大きく複雑なもの・吉祥紋様彫刻で飾られるものは土地神の小祠に多く、主として小祠入口上部の装飾、控壁、台座中央部に福・寿・喜を表す図案が用いられることが判明した。

 なお、王家大院における小祠は全体の約三分の二が土地神を祀っていた。人々がこのように多くの土地神の小祠を飾ったことは、一地方を管領する土地神が、福=幸運、寿=長寿、喜=慶事の全般をもたらしてくれることを期待していたことの表れだろうから、土地神の性格を考える上で重要な手がかりとなるであろう。
  また、吉祥紋様の内容が個々に異なることや、凝瑞居の小祠に禄=出世をあらわす「鯉魚跳龍門」が用いられていたことからみて、小祠の吉祥紋様には設置された各院落の性格や主人の趣向なども反映されていると予想できる。この点については、各院落の性格とあわせて更に詳細に検討する必要があるので、今後の研究課題としたい。



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