The Present Situation and Problems on the Conservation of Historical Districts in the Tohoku District
A Case Study on Minamimachi-dori Area in Kitakata City, Fukushima Prefecture and Murata Area in Murata Town, Miyagi Prefecture
地方の時代、地方分権、地方自治など、首都圏や大都市圏の開発整備からの離脱の必要性が叫ばれるようになってから久しいが、相変わらず地方の停滞は続いており、なかでも地方都市の中心に位置する歴史的街並みの衰退は著しいものがある。歴史的街並みは、日本独自の伝統的な生活様式に支えられた景観が持続する場であり、かつては都市の中心市街地として機能していた。しかし、高度経済成長の波により、こうした街並みの多くは姿を消し、現存する歴史的街並みも大半が高齢化や空き家の増加、地域コミュニティーの崩壊等の問題を抱え、解決策の見つからないまま衰退へと向かっている。
一方で、近年は各地の歴史的街並みにおいて保存・整備へ向けた取り組みが様々に行われ、一定の成果を収めていることもまた事実である。持続可能な保存・整備の在り方を模索するためには、こうした取り組みの成果や意義を検証することが不可欠であろう。
こうした認識にたち、我々は2001年度から2003年度にかけて、主として西日本の歴史的街並み24箇所を対象に、現地観察や行政における保存・整備担当部局へのヒアリング調査を行ってきた。その成果は、すでに2004年度の日本建築学会大会(北海道)で発表したとおりである*1。引き続き2004年度には、調査対象地域をさらに全国へと広げることを意図して、東北地方の歴史的街並みの調査を行った。本稿は、この調査のなかで明らかになった2地区の歴史的街並みにおける現状に分析を加え、持続可能な望ましい保存・整備につなげるための課題を考察することを目的としている。
なお、本研究は「歴史的街並みにおける保存・整備の実態と課題に関する研究」(2004年度神戸芸術工科大学大学院学内共同研究、代表・山之内 誠)における成果の一部である。
*1― | 山之内 誠ほか「歴史的町並みの調査概要と空家増加の問題について 歴史的町並みの保存・整備の現状と課題その1」『日本建築学会大会(北海道)学術講演梗概集』F-1,2004年 伊藤真貴ほか「街並み保存制度の適用と整備状況 歴史的町並みの保存・整備の現状と課題その2」『日本建築学会大会(北海道)学術講演梗概集』F-1,2004年 黒川 茜ほか「観光を含む産業と保存・整備の関係 歴史的町並みの保存・整備の現状と課題その3」『日本建築学会大会(北海道)学術講演梗概集』F-1,2004年 |
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