図-1 喜多方調査対象地区位置図

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図-1 喜多方調査対象地区位置図


写真-1 喜多方南町通りの街並み

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写真-1 喜多方南町通りの街並み


図-2  村田調査対象地区位置図

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図-2 村田調査対象地区位置図


写真-2 調査対象、村田地区の街並み

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写真-2 調査対象、村田地区の街並み

2.研究方法

1)対象地区の選定
前述のように、前年度までの西日本を対象とした研究に対し、全国的な広がりを持たせることを意図して東北地方をフィールドに定めた。本稿では特に次の2地区を扱う。
・福島県喜多方市南町通り地区(以下「喜多方」と略記す。図-1、写真-1)
・宮城県柴田郡村田町村田地区(以下「村田」と略記す。図-2、写真-2)
これらの2地区に定めた理由は、次の3点である。すなわち

(1) 景観条例や伝統的建造物群保存地区制度等の建築制限を行わずに、歴史的街並みを維持していること。
(2) 過去に一度、町並み調査報告書が刊行されているため、現況との比較から変容を探ることが可能であること。
(3) いずれも蔵造りの町として知られている点が共通していること。


このなかで、(1)の条件を設定した理由は、建築制限による街並み整備を推し進めた場合、伝建制度などを利用して観光化を強力に推し進めたりしないかぎり、多くの町並みが抱える高齢化や空き家の増加、あるいは地場産業の活性化による人口流出の防止などの根本的な問題解決にはつながらないと思われるからである。また、(2)の条件については、喜多方は1979年、村田は1993年にそれぞれ町並みの調査が行われているため*2、今回の調査までにそれぞれ25年、11年が経過しており、変化が読み取りやすいと考えた。(3)の条件は、似通った建築構成の街並みを比較することで、問題点がより明確化すると考えたことによる。

*2― 喜多方市教育委員会編『喜多方の町並(商家) 伝統的建造物群保存調査報告書』 1980年
日本ナショナルトラスト『村田の歴史的町並み』 1994年


2)現地調査およびヒアリング調査の実施について
両対象地とも、事前に文献・資料収集を行った上で、現地調査及び行政における保存・整備の担当者などへのヒアリング調査を行った。
現地調査においては、過去の調査と比較して建て替え行為がなかったかどうか、また建物の用途変更がなかったかどうかを把握することに重点をおいた。その理由は、商家の歴史的街並みを健全に維持するためには、旧来からの産業・商売を健全に維持していくか、社会的要請の変化に応じて柔軟に建物の用途変更を行うことが必要だと考えるからである。多くの衰退していく街並みでは、商売が立ち行かずに店を閉めた後、用途の転換が上手くなされず住居化(多くは倉庫的に利用か)または空き店舗化し、いずれ取り壊される運命をたどるものが多い。こうした変化は街並みの維持にとってはマイナスの変化と位置づけられるだろう。
一方、行政へのヒアリング調査については、現地調査のみでは把握できない行政や住民らの保存・整備に対する方針・意識や、具体的な活動等について、聞き取りを行った。
(1)調査日時・メンバー
調査日時: 2004年8月25日(喜多方)、同26日(村田)
調査メンバー: 山之内 誠・土肥博至・伊藤真貴・黒川茜・石井清巳・山岸千夏

(2)現地調査の方法
a) 対象地区の通りに面した全棟について、現在の住宅地図上に外観から判断できるおおよその建築年代と構造(木造・RC・蔵造り等)を記入。
b) 対象地区の通りに面した全棟について、現在の住宅地図上に現在の建物用途(商売内容、住宅、空き家など)を記入。
c) 対象地区の通りに面した全棟について、連続立面写真を作成するために正面からデジタルカメラで撮影。

(3)ヒアリング調査について
a)場所と担当部局
[喜多方] ヒアリング場所: 喜多方市役所
  行政担当部局: 喜多方市産業部商工観光課観光振興室
教育委員会生涯学習課
[村田] ヒアリング場所: 村田町役場
  行政担当部局: 村田町商工観光課
社会教育課

b)ヒアリングの内容
街並みの歴史的形成過程の概要、町並み保存における住民・行政・研究者の役割、
保存整備内容の特色、これまでに実施した主要な整備事業の内容、街並み保存に関する住民団体の概要と役割、伝統産業・地場産業の現状と町並み保存との関係、観光化に対する姿勢、今後の整備予定、などについて事前に質問を送り、現地で回答を得た。




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