DESIGN CONCEPT OF ECO-VILLAGE, “CRYSTAL WATERS”
デジタル時代は、視覚と聴覚の時代だ。
今まで五感でとらえていた世界を、視覚と聴覚のみで再構成する試みがデジタル化である。私たちはデジタル情報の洪水のなかで、対象の匂いを嗅ぐこともなく直接に触れることもないまま、対象を認識したと錯覚する。このような偏った関係は、やがて対象を思いやり慈しむといった最も人間らしい感性を萎えさせるに至る。デジタル時代は私たちに感性の変容を迫る、希薄なつながりの時代ともいえるのだ。
ところが、対象とのつながりはエコロジーの本質において、もっとも重要な切り口だ。私たちは、世界中のあらゆるものと自分とを、つながりという観点から再確認する必要がある。
まず、身近な人やものからはじめよう。たとえば、昨日の夕食で食卓にのぼったナス。スーパーマーケットで何気なく買った場合と、そこに生産者農家の写真入りカードが添えられていた場合。また、市民菜園で自分で育てた場合。3番目のケースが、自分とナスとのつながりが一番濃いというのは、疑いようがない。自分で育てた場合、そのナスについての多くの情報を把握しており、一番深く理解しているといえる。手塩にかけたナスを食すとき、あなたはただ空腹を満たすだけの食材としてではなく、命の鎖をつないでくれるかけがえのないものを口にしているのだと実感するだろう。
つながりが濃いということは、そういうことだ。人と人、人ともの、人と自然、人と地球などの関係を自分の生活に近づけ、どのくらい深くつながることができるか、わかりあえるかが、その人のエコロジー観を形成する。
ここに、つながりが希薄なデジタル時代に生きる私たちが、エコロジーを語る難しさがある。
本研究は、パーマカルチャーで知られたエコ・ビレッジ「クリスタル・ウォーターズ(以下、CW)」を中心に、元祖生活協同組合の街「マレニー」、そして自家菜園でパーマカルチャーを実践するエコロジスト、デジャーデン・由香理さんのエコ・哲学を、つながりというキーワードのもとに考察する。