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1 研究対象地および調査方法

11 研究対象地

 現代のストレス社会において、森林浴がもたらす気持ち良さ・快適さに注目が集まり、特に散策路が整備され、管理された森林におけるリラクゼーション効果の計測が研究の主体となっている。
 本研究では、そのような平地林とは別に、我国の森林環境の大部分を占めながら、有効に活用されていない管理放棄された二次林(里山林)を対象としていることが大きな特徴といえる。
 本研究対象地となる神戸芸術工科大学のキャンパスエリアを含む一帯は、かつて保安林指定を受けたアカマツ林であった。その後、保安林指定の解除が行われ神戸研究学園都市開発が進められたが*4、本学では保安林指定を解除した樹林地をエントランス部分に残す案が採用され現在に至っている。(写真3)


写真3 対象林(学内林)を含む神戸芸術工科大学キャンパスの造成過程

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写真3 対象林(学内林)を含む神戸芸術工科大学キャンパスの造成過程


 このように都市化に伴い断片化された残存緑地の多くは、生態的な動植物の生育環境や、生態回廊の一部としての役割が指摘されてきているが*5、人の利用からみた価値化がなされていないために、希少な緑地空間としての保全・活用がなされておらず、結果的に、開発を免れた残存緑地の多くは、無駄な空間として封鎖され、ゴミの不法投棄や、開発の対象となりやすく、簡単に失われてしまう現状におかれている。


12 調査方法

 図-1に本研究のプログラムを示す。
 このように大きくは1)日常的な状態である学内の教室における活動前の心理状態と、2)二次林内における林内活動後の心理状態をそれぞれPOMSにより測定し、その差を分析するとともに、季節ごとの好ましい林内の分布状況との関連性を分析することとした。
 なお、管理放棄林になんらかの目的がない状態で人が入ることが想定できないので、a) 植生区分や植生同定法のレクチャーを行い、実際の林内で好ましい林分を探索しプロットする森林探索プログラムと、b)管理放棄による里山林内での植生遷移の概要を説明し、実際に自生ツツジ類や落葉低木を被圧する常緑性低木の除伐による林床管理プログラムという2つの森との関わりの度合いが異なる林内活動を計画し、その前後の心理状態の差を比べることにした。(図1、写真4)

図1 森林浴プログラムの実施内容

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図1 森林浴プログラムの実施内容

写真4 各森林浴プログラムの実施風景 (上原撮影)

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写真4 各森林浴プログラムの実施風景 (上原撮影)



 レクチャーでは対象林と同様のアカマツ林(二次林)における里山管理のサイクルとその管理放棄による植生遷移の概要を、明るい環境に適応するために減少しつつあるコバノミツバツツジ等の野生花木類の生態と関連させて紹介した。(図-2)


図2 林床管理プログラム前のレクチャーの概要

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図2 林床管理プログラム前のレクチャーの概要


 また林内活動による環境学習効果については、全2回のプログラム終了後にいずれも学内の教室で
a.管理放棄林における林内活動のリラクゼーション効果、b. 本活動への参加による身近な緑地環境への関心の高まり、c.今後の環境保全活動への参加意欲に関するアンケート調査を行い、好きな森林イメージについては、事前の告知なしに、第1回目の説明時と第2回目の終了時に教室で描いてもらい、イメージの変化を比較分析した。
 前報において夏季の林内活用による心理変化の分析結果を報告したので、本稿では主に冬季の結果を中心に報告を行う。


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