The new study of "Universal Design" through EVEN ART PROJECT - through activities in 2006 -
ユニバーサルデザインは、世間一般に認知されつつあるが、まだ高齢者・障害者専用のデザインだと思われが ちである。しかし、本来のユニバーサルデザインとは、「すべての人が快適に暮らせる生活環境での実現」という意味をもち、この考えでの普及にはまだ至っていないのが現状である。今後、ユニバーサルを視点とした社会・経済構造に移行しつつある中、デザインを目指す学生たちにとっても、必要不可欠なテーマである。ユニバーサルデザインを一般の人々に広めるためには、もっと若い楽しいデザインが提案され、デザインビジネスとしても通用するシステムが構築されなければならない。
これらの背景をふまえて、2005年5月、ユニバーサルデザインを学生の視点から考えるプロジェクト・even art project(イーブン アート プロジェクト 以下eapとする。)が設立された(図1)。
eapは、神戸芸術工科大学ファッションデザイン学科の有志教員と学生たち約50名によって設立されたデザイン&アート集団である。evenとは、「平らな」、「平等」を意味し、デザインやアートを通じて身近な人に心地よさを届けるというコンセプトで設立された。
2005年度は、震災10年の平成17年、復興に向かう兵庫、神戸において、「第3回ユニバーサルデザイン全国大会」が開催された際、ファッションショーとショップ・ワークショップの提案を行った*1(写真1)(写真2)(写真3)。彼らは、本プロジェクトを通じて、子供や障害のある人、企業の人、幼稚園の先生、子供を持つ父兄などさまざまな環境の人たちとプロジェクトを組んだ。ともにユニバーサルデザインについて考え、そのプロセスの中で、彼らは、「楽しいこと」、「廃材を利用してつくる」、「サイズ調整できるもの」、「肌に優しい」、「アウトサイダーとのデザインに挑戦する」などのテーマをあげ、思い思いのデザインを試みた。ユニバーサルデザインに関しては、多々議論はあるが、本プロジェクトが目指すユニバーサルデザインとは、自他ともに快適で楽しいと感じるデザイン活動を提案することである。ただ単に使いやすいモノを作るのではなく、個人を尊重する意識や特異性を生かし、一緒に何かを作り出すしくみづくりを考え提案することにある。
設立後、2年目である2006年度は、その主旨をふまえて、市民参加型のワークショップとアートビジネスを実施した。本報は、その活動内容とその成果について報告する。