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5 ワザとココロ

  コンピューターは想像力を増幅する装置である。「ただの道具だ」などという人もいるが、優れた道具は使う人を駆り立てる。もう少し詳しく述べると、良くできたソフトウェアは、開発者の知恵が、使うものの知恵を刺激するということだろうか。機械を介してはいるが、そこには人間同士のつながりがあるといっても良いと思う。芸術作品に触れ、共鳴したとき。それを制作した者の叡智を知らされることとも似ている。あるいは、より直接的なものなのかも知れない。コンピューターの登場と優れたソフトウェアによりアニメーションを制作する人は確実に増えたし、楽器の演奏ができなくても、うまく付き合えば音楽を制作することも可能だ。知らないことがあっても世界中から情報を集めればいい。様々な道具を専門の設備を持つ特権階級から開放し、特殊だった技術が一般化してゆく。私たちは表現の自由を獲得した。一方で、ココロの闇も増幅してしまう。誹謗・中傷が飛び交い、いじめが眼に見えない形で深刻化しているとも聞く。自由は歓迎するべきことである反面、警戒すべきことでもある。自由はそれを使う人間を映す鏡であり、使う者のレベルが直接的に反映される。それはつまりココロの問題ということになる。幸か不幸か、3DCGは感覚だけでは作品が完成することはあり得ない。多くの手順をクリアした先にようやく表現の自由を獲得することができる。しかし、制作者の意志が弱ければ、自由を使いこなすことができない。ひょっとしたら、3DCGは、自由との付き合い方を学ぶ教材として最適なもののひとつなのかもしれない。


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