県民創作オペラ『魔法の靴』上演まで約一年間、全体会議や担当別の度重なる打ち合わせ、プロジェクト参加希望者の会場見学、舞台衣装見聞、学内ではプロジェクト参加者とのミーティングも必要に応じて行った(写真1)(写真2)(写真3) 。
3-1 衣装デザインと使用素材の打ち合わせ
このプロジェクトでの衣装デザインは、外部のプロの衣装デザイナーが担当。衣装デザインの意図、制作手法、使用素材など外部スタッフと詳細にコミュニケーションをとりながら遂行していった(図1)(図2)(図3)(図4)(図5)(図6)(図7)(図8)(図9)(図10)(図11)(図12)。
3-2 ベースパターンの作成
8月3日、夏休みに入っているが、卒業生・研究生もスタッフに加わり、婦人服JIS(日本工業規格)の寸法を基準に、9号サイズをベースに11号、13号にグレーディングし、身頃原型の作成を行った(写真4)(写真5) 。
3-3 パニエパターンの作成と縫製
スカートは、膨らませたシルエットを表現するため、アンダー・スカートのパターンを作った。サラン*1 を土台にチュールを何段、何重にも重ねながらボリュームを出していった (写真6) (写真7) (写真8) 。
3-4 採寸
JISを基準に作成した各サイズの原型を使用した。しかし衣服制作には着用者の採寸は不可欠であることから、執筆者が採寸法の指導を行った (写真9)(写真10) 。
3-5 トワル組み立て
平面裁断手法で作成したパターンで各アイテムのトワル*2
組みを行った。
シンデレラ(ウェディングドレス)、妖精の女王の衣装は、デザイン画をイメージに直ちにボディでトワルを組み立てていった。立体的にシルエットが確認できバランスも取りやすい立体裁断手法で取り組んだ。舞台衣装は全体的にボリュームがあるので、トワルの組み立ては2~3名で対応した(写真11)(写真12)(写真13)(写真14)(写真15)。
3-6 仮縫い
一度に仮縫いは困難である。出演者のスケジュールと調整しながら仮縫いの日を設定した。1回目は夏休み終了直後9月29日、モデルに学内に来ていただきトワルで仮縫いを開始。舞台衣装という特殊な衣装を本格的に制作するのは、学生たちにとっては初めての挑戦である。デザイナーや芸術監督たちを交えての入念なチェック。シルエット、ボリュームなどを考慮し、舞台上で出演者が衣装でいかに大きく見せられるか、また、顔を小さく見せるには胸元のディティールをどう工夫すればよいか、素早く着せ替えるにはどういう始末がいいか等々。細かな心使いで数えきれない箇所を検討した(写真16)(写真17)(写真18)(写真19)(写真20)(写真21)(写真22)(写真23)(写真24) (写真25)(写真26)(写真27) (写真28)(写真29)(写真30) (写真31) (写真32) (写真33)。
3-7 パターン修正
ベースパターンを基に、採寸を参考に、トワルの仮縫いを行った。しかし、パニエのシルエットやボリュームに相当な修正があり、改めて舞台衣装の制作の難しさを思い知った。修正にも時間がかかってしまい、後までスケジュール調整に響いてしまい、今後の課題となった。
3-8 素材と副素材
オペラという舞台上で、出演者の役柄を表現する衣装の素材を選定するのは時間のかかることである。選定はデザイン画の打ち合わせ後、デザイナーとともに大阪にて素材を収集した。購入は、パターン修正後必要用尺を発注、スカートなどひとつのパターン容量が大きく想像以上に用尺が必要となった。それぞれの使用箇所をパートにわけ、素材帳を作った。これが後々にも大変役立った。また、副素材を用いることにより、より一層の役柄に近づいた(図13)(図14)(写真34)。
3-9 裁断、縫製
学生たちは、授業の課題制作の合間をぬって、衣装制作を行った。困難の中で責任を持ち、トワルと素材の風合いの違いも認識しながら裁断、縫製を行った。また、普段、課題制作で触れることができない高価な生地や数々の副素材を使用した。出演者が歌い、ダンスをするための動きやすい衣装制作も体験できた (写真35)(写真36)(写真37)(写真38)(写真39) (写真40)(写真41)(写真42)(写真43)(写真44) (写真45)(写真46)(写真47)(写真48)(写真49) (写真50)(写真51)(写真52)(写真53)。
3-10 衣装搬入と再調整
2008年1月8日、12日両日に衣装を搬入したが、微調整で済むもの、大幅に修正するものなどが発生し、持ち帰って修正した(写真54) (写真55)(写真56)。
3-11 衣装パレードとフィッティングチェック
完成した衣装を出演者が着用、アクセサリーや靴、ヘアメイクとも合わせてチェック、調整した(写真57)。
3-12 リハーサル
2008年1月18日(金)は、リハーサルである。学生たちは早朝から会場に集合し、役割担当別に作業を開始した。スタッフ間の連絡、衣装の修正やまとめなどを行い、学生たちはてきぱきと作業にあたった (写真58)(写真59) (写真60) (写真61)。
3-13 本番
2008年1月19日(土)、20日(日)は、いよいよ本番の日である。スタッフは会場である兵庫県立芸術文化センターに集合。出演者の衣装着付けのサポートや本番前の衣装チェック、楽屋作業室にてアイロンがけや修正、まとめなど、ぎりぎりまで最終確認作業を行った。
上演は1日一回、2日間にわたったが、両日で1600名の座席数がある。しかし公演前にはすでに入場チケットは完売しており満席であった。
公演は大成功であった。終了後、学生たちには、最後までやりきったという満足感と充実感がみなぎっていた。長くつらかったことも吹き飛んだ様子が垣間見え、うれしくも、またたくましくも思えた(写真62)(写真63) (写真64) (写真65)(写真66) (写真67) (写真68)(写真69) (写真70) (写真71)(写真72) (写真73) (写真74) (写真75)。