ここでは、2007年9月に実施された第4回学園都市学校連携アートワークショッププロジェクトを例に、学校と地域の連携について述べていく。
第4回のアートワークショップでは、新聞紙と医療用石膏マット*7 で基本的な造形を施し、水彩絵の具、蛍光塗料および蓄光塗料を用いて彩色を行った造形物を制作した。参加した小学生は2年生から6年生までの約120名。小学生が造形をしやすいように、想像上の生物の形態をモチーフに制作を展開した。図2は制作過程である。
造形物はその日のうちに会場内に展示した。近隣の農家から提供していただいた稲わら・茅などを古代の学園都市に見立てて、子どもとスタッフ全員で展示作業を行った。また、夜間は紫外線ライトを照射し、蛍光塗料および蓄光塗料の効果を発揮できるようにした(図3)。
4-1 子どもの感性のおもむくままに
このワークショップでは、子どもたちの感性を最大限に生かし、その感性によって引き起こされる創作へのパワーを高校生および大学生のスタッフによって造形物に仕上げていくことが目的である。そのため、できる限り制作に制限を与えず、子どもたちの作るがままに任せるようにした。そして、形の整形や色彩構成など、子どもたちが制作の途中で迷ったときに、高校生および大学生が助言を与えるようにした。
その結果、最終成果物にさまざまなバリエーションが生まれ、また、子どもたちは成果物に対して、強い関心を寄せるようになった。
4-2 記録とリフレクション
4-1で述べたように、このワークショップでは最終成果物に対して優劣をつけたり、あるいは模範成果物を展示したりすることはなかった。そのため、子どもたちが制作プロセスで、いかに楽しみ、集中し、かつ感性を解き放って制作活動に没頭できたかを客観的に観察する必要があった。そこで私たちは、ワークショップ中の記録を動画と静止画で綿密に記録し、会場内で子どもたちに開示していった。このことにより子どもたちは、数分前に自分たちがしていた行動を客観的に観察することができるようになり、自分たちの制作に対する姿勢やスタッフなどとのコミュニケーションについてリフレクション*8 をすることが可能になった。
4-3 Webサイトによる公開
記録されたデータは即日webサイトに掲載され、参加者が帰宅後に1日を振り返ることができるよう考慮した(図4)。これにより、ワークショップを1日限りのイベントとするのではなく、次回の参加を喚起させたり、あるいは、次の参加の時にはさらに制作意欲が向上した状態で臨めるように配慮した。