話が浮上してきたのは2007年10月頃だった。しかし、海外の人たちとのプロジェクトは想像もつかなかった。日本と中国の連絡の中で、メールのやり取りができないという不便さを感じながらも具体的な行動は、2008年3月からであった。中国北京市で2回にわたり中国側スタッフとの打ち合わせと会場見学を行った。数えきれない程の電話での打ち合わせをしつつ、学内においてはプロジェクト参加者を募り作品制作を遂行していった (写真1)(写真2)。
3-1 デザイン画とモデルの選考
デザインのテーマは、「日本と大人服」。当初、学生たちには理解しにくかったようだが、自国の特性は何なのか、シニア世代になったらどんな衣服を着たいのか、と投げかけると、さまざまなアイデアが浮かんでいった。鶴、着物、扇子、柔道着、文様、般若、和紙、漆、など大きくイメージが膨らみ、デザイン画に描いた。デザイン画はメンズ6点、レディース16点を選考した。それに伴い中国から送られてきたモデルのプロフィールで自分たちがデザインしたイメージにマッチするモデルを選んだ(図1)( 図2)( 図3)( 図4)( 図5)( 図6)( 図7)( 図8)( 図9)( 図10)( 図11)( 図12)( 図13)( 図14)( 図15)( 図16)( 図17)( 図18)( 図19)( 図20)( 図21)( 図22) (写真3)。
3-2 立体裁断によるパターン制作
制作を開始したのは夏休みに入ってからであった。パターン制作技法としては、平面裁断と立体裁断があるが、ほとんどの学生は平面裁断でパターンを作っていった。彼らには自分がデザインしたものをまずボディでトワルを使い組み立てていく方法が分かりやすかったようだ。 本来であれば、トワル組みから仮縫いという工程をとるが、今回は、ボディ上での修正後、パターンを作成、生地を裁断していった(写真4)(写真5)(写真6)(写真7)。
3-3 裁断、縫製
素材は学生たちのデザインイメージを尊重しつつ検討していった。夏休みといえど、学生たちは各自、諸事を抱えている。その調整を行いながら進めていった(写真8) (写真9) (写真10)。
3-4 作品チェックと出番検討
制作進行状況も確認しつつ、完成のメドもついてきた頃、学生たちを交えてアイテム、色別などの構成を踏まえ、ファッションショーの出番順を検討した(写真11)(写真12)(写真13)。
3-5 衣装搬入とフィッティング
2008年10月4日(土)、事前フィッティングのため、学生2名(高橋麻衣香さん、藤田美佳さん)を同行し、北京へ全作品を持参した。
10月5日(日)、学生たちは記録、フィッティングと役割分担で、手際良く中国側スタッフ立会いの下、モデルのフィッティングを続けていった。また留学生で大学院生の 瑾さんも通訳として補助してくれた。
半分以上の作品に何らかの修正が発生し、持ち帰ることになった(写真14)。
3-6 修正
すでに後期の授業は始まっていた。持ち帰った作品は、出発前日のぎりぎりまで修正作業が夜遅くまで続いたが、協力しあって何とか再搬入の準備にこぎつけた(写真15)(写真16)。
この間、サンテレビより取材があり学生たちも緊張の中、取材を受けていた (写真17)。
3-8 リハーサル
2008年10月13日(月)は、リハーサルである。早朝から本番会場に隣接する別会場へ全員で移動した。この時、学生たちとモデル、中国スタッフとの初顔合わせ。学生たちが制作した作品に対して彼らは好意をもって接してくれ、時間もかけずにお互いにコミュニケーションを図ることができた(写真19)(写真20)(写真21)(写真22) (写真23)(写真24)。
3-9 本番
2008年10月14日(火)は、本番の日である。作品、作成した展示ボードやイーゼルなどを手分けして会場である中国人民対外友好協会ホールに搬入、準備。リハーサル、本番直前まで作品の確認や手直しなど、舞台裏は錯綜していた(写真25) (写真26) (写真27)。
日ごろ、一般の人たちが出入りできない会場であったが、2回開演の中、中国、日本の要人も含め500名の入場者があり、熱い声援を受けることができた(写真28) (写真29) (写真30)。
モデルも学生たちの作品を身体中で表現してくれ、より生き生きと今回の趣旨が伝わった。中国の人たちにも好感をもって見てもらえて、大成功だったと思う。学生たちは、国際交流という初めての取り組みに対して不安と期待でいっぱいだったと思う。しかし、ショー終了後はやりきったという満足感と充実感がみなぎっていた(写真31)(写真32)(写真33)(写真34)(写真35)(写真36)(写真37)( 写真38)(写真39)(写真40) (写真41)(写真42)(写真43)(写真44) (写真45)(写真46)(写真47)(写真48)(写真49)(写真50)(写真51)。