3-3.産学連携ブランド「ネイブル」の提案
高度な生産技術を持つ播州織の産地と学生の若々しい発想力と教育と研究の中で育んできたデザイン力を持つ大学の産学連携による播州織の新しいイメージを発信するブランド「n+abl(ネイブル)」を提案した。ブランド名の「n+abl」は、西脇市に日本の緯度、経度の中心である東経135度・北緯35度の交差点があることから「日本のへそ」と西脇市がPRしている「へそ」を表す英語の「navel」をイメージできるところからつけた。また、「n」は西脇の頭文字、「abl」は可能性を表す「able」の意味を込め、「+」は経糸と緯糸の交わる織物組織を現し、西脇(n)に可能性(able)がプラス(+)することも示すことからブランド名を「n+abl(ネイブル)」とした。
ブランド・コンセプト
播州織は、高品質の製品を作っているものの、これまで受託加工生産を続けてきたことから、デザイン性が弱く、独自企画の発信があまりされてこなかった。また、マーケットにおいては、最近のカジュアル指向のなかでニット素材が重視されている現状を踏まえ、「ネイブル」においては、あえて先染綿織物にこだわり、播州織の持っている高品質な特徴を実感してもらえ、尚かつファッション性の高いスタイルにこだわるシャツを発信することを目指した。
播州織の品質の特徴
1. 細番手の糸を用いた織物の持つ手触り良い風合いや透明感
2. 先染織物の持つ光沢感や色彩の美しさ
3. 綿織物の持つ、自然な風合いや肌に対する優しさと安心感
これらの高品質感は、歴史と伝統の中で育まれてきた高度な技術により生み出されるものであり、播州織の魅力である。この魅力を全面に打ち出したシャツのデザインを提案する。
ターゲット
近年、ビジネスシーンにおいてクールビズ、ウォームビズの流行によりシャツが重要なアイテムになってきた。また、ファッションのカジュアル化を背景にして、シャツにこだわりを持つ人も増加している。一方、エコロジーに対する意識の高まりは、衣服に天然繊維が求められようになり、特に肌に対する優しい綿素材が、注目されている。そのようなシャツにこだわりを持つ人たちをターゲットにした。
デザインの基本コンセプト
*カジュアルシーン、ビジネスシーンにドレスシーンも加え、幅広い生活シーンのシャツをデザイン提案する。
*ヤングからシニアまで年齢を超えたデザイン提案をする。
*先染綿織物の高品質な特徴を活かしたデザインにする。
*学生のもつ若々しい感覚をデザインに取り込み、これまでにない新鮮な感覚のデザインを目指す。
「ネイブル」ブランドには商品構成として、シーン別に7テーマの提案を行った。各企画のデザイン・コンセプトは下記の通りである。
*ビズ・ア・ラ・モード(BIS A LA MODE)
ビジネスシーンに向けたレディース、メンズの新感覚のクールビズの提案。先染素材のストライブを活かし、縦柄とバイヤス使いの変化や前後1枚続きのカッティングに特徴を持たせた。
*ココチ(COCOCHI)
キャリアのレディースに向けたホームウエアーのシャツの提案。透明感のあるアースカラーの無地のブロードを使い、ゆったりとしたボリュームで身体を締め付けずに、心と体をリラックスさせるデザインが特徴。
*アクセソライズド・ドレス(Accessorized DRESS)
メンズ、レディースのアダルトに向けたパーティのためのドレスシャツの提案。白とダークカラーのジャガード織り無地柄やストライブを用い、細身のシルエットと、ピンタック、フリル、ギャザーなどのディテールに特徴を持たせた。
*ワーク(WORK)
機能性を重視したワークシャツ感覚のメンズ、レディースの遊び着の提案。ワークウエアーに用いられるマチ付きポケットやタブ使いなどのディテールを取り入れ、体にフィットする綿の楊柳を用いた細身のシルエットに特徴を持たせた。
*スウィート(Sweet)
少女のかわいさを引き出すハイティーンのためのカジュアルシャツの提案。ピンクやブルーなどのパステルカラーのドビー柄を用いて、ギャザーやフリルを多用したディテールに特徴を持たせた。
*ユースフル(Youthful)
身体を意識させるカッティングにこだわったヤング・メンズ、レディースのカジュアルシャツの提案。明るい色のチェックに白無地をミックスし、取り外しの衿、アームホール切り替え、幅広のカフスなど、個性的なプロポーションを強調した。
*マム(Ma'am)
ヤング・レディースのよそ行きのためのオーバーブラウスの提案。細番手の無地のブロードを用いて、プリーツを入れた衿、凝ったタックやリボン使い、変わり袖など、かわいいながらも大人っぽい雰囲気を持たせた。