4-1.概要
しかしながら、地域一帯の活性化を図るには、「旧来住家住宅」の存在だけでは充分ではない。もしもこの地域の中にさらに多くの活動拠点を設けることができれば、複数の拠点間に人々の流れが生まれ、歴史性のある地域のまちなみの良さを、より多くの人々に認識してもらえるであろう。また、それらの拠点での活動に地域内外の人々が関わるならば、伝統に裏付けられた現代の播州織の価値が、いっそうの広がりをもって発信されると考えられる。
そのような考え方に基づき、工房館とショップという2つの新たな拠点施設がつくられることになった。これらは共に、地域内の既存建築物を改修利用するものとして構想され、実際に賃貸可能な物件として選定されたのが、中心市街地内にある「旧織物工場『丸貞』」と「西脇家政高等専修学校の旧調理室棟」の2つの建物である。
「旧織物工場『丸貞』」は、西脇市内にいくつか残る「のこぎり屋根」を特徴とした播州織の全盛期を象徴する木造の機織り工場のひとつである。改修前には駐車場として仮利用されていたが、ここを今回「播州織工房館」と名付け、播州織などを生かした工芸品の制作場として整備することになった。多くの天窓を有する広々とした空間は、様々なイベントにも活用できると考えられた。