2-1 ヘモグロビン+ミオグロビンの脱酸素化濃度の絶対値
2チャンネルの時間分解NIRS(浜松ホトニクス、TRS-20D)を2台用いて、大腿筋の4部位[外側広筋と大腿直筋の遠位(体幹に遠い側)と近位(体幹に近い側)] におけるヘモグロビン+ミオグロビンの脱酸素化濃度の絶対値(deoxy-[Hb+Mb])を連続的に測定した。同時に、平均光路長、散乱係数、および吸収係数を実測した 。近赤外分光プローブを大腿部の表面4箇所に貼り付けた(送光部と受光部の距離は3cm、測定深度は約1.5cm)。大腿筋4部位の選定については、事前に連続波NIRS(浜松ホトニクス、NIRO-200)で得られた(Δdeoxy-[Hb+Mb])の相対変化を参考にした*2, *3。
deoxy-[Hb+Mb]の値は測定部位の皮下脂肪厚の影響を受けるので、超音波ドップラー装置(Yokogawa-GE Medical, Logiq400)を用いて大腿部の4部位における皮下脂肪厚を測り、deoxy-[Hb+Mb]の値を補正した。
NIRS装置によって測られるdeoxy-[Hb+Mb]は血液量変動の影響を受けにくく、活動する筋肉の酸素消費(VO2)と酸素供給(血流量、Q)の比率(VO2/Q)を反映するので*2, *3、鏡像関係にある筋肉微小循環の酸素分圧(PO2)の動的応答を推測できる。すなわち、筋肉微小循環の酸素分圧が高いほど、脳や筋肉細胞への酸素の取り込みが多くなり(有酸素的なエネルギー代謝)、筋肉組織の負担や疲労を軽減できる。
2-2 活動筋全体の酸素代謝
大腿筋局所部位におけるヘモグロビン+ミオグロビンの脱酸素化濃度を筋肉全体の酸素代謝と比較するために、肺胞レベルのVO2を連続的に測定した(呼吸ガス交換測定装置、ミナト医科学AE-300S)。肺胞レベルのVO2動態(第2相と第3相成分)は大腿筋全体の酸素消費動態を反映し、血液採集のカテーテルを挿入する必要がなく、非侵襲的に計測が可能である*6, *7。
2-3 筋毛細血管レベルの血流量
上述の2)において計測したVO2の応答をdeoxy-[Hb+Mb](動脈と静脈間の酸素量の差、CaO2-CVO2)で除することにより、筋毛細血管レベルの血流量(Qcap)を推定した*8。