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1.研究のための構想

アートワークショップやアートプロジェクトは実態として多様で、その言葉の示す内容は極めてあいまいな状況である。そのため研究を進めるためには研究対象を明確にしなければならない。本稿では研究をすすめるための構想として、アートワークショップやアートプロジェクトが「プロセスを重視した共同制作による芸術表現」であることに着目し、こうした芸術表現を「共創型芸術」という新しい概念で捉えることを提案する。「共創型芸術」は参加型芸術や体験型芸術を発展させた芸術を意味する筆者の造語である。

以前から、さまざまなアートワークショップを実践するなかで、芸術表現における参加者の主体性の高さや、芸術家との連携の深さを想起させるには新しい言葉が必要であると感じてきた。なぜなら「参加型」では、ワークショップの現場の雰囲気やプロセスの重要性を伝えるうえで共同性や創造性に関する想像を強く喚起することが難しいからである。もともと体験型芸術や参加型芸術が注目されるようになったのは制作する役割としての芸術家と、鑑賞する役割としての一般の人々をつなぐ芸術表現だったからであるが、アートワークショップやアートプロジェクトではその二者の距離はほぼゼロとなり、制作と鑑賞が交差する場が生まれている。共創型芸術という言葉によって、こうした芸術表現を的確に捉え、想起させることができるようになると考える。

共創型芸術は、芸術鑑賞の新たな形式を表すと同時に、作品制作の新たな形式を表す言葉でもある。アートワークショップやアートプロジェクトの特性を「制作と鑑賞の交差する場に生まれる芸術表現=共創型芸術」と捉えることで研究対象とその内容が明確なものとなり、表現の可能性や課題を具体的かつ総合的に検討できるようになると考える。

    

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