4|まとめ

4-1 住民参加型のまちづくりの重要性

三宮中央通りは、住民参加型でまちづくりが行われてきた。そこでは単なる思い付きではなく、住民同士が議論をしながらデザインが選択される仕組みが取り入れられていた。
このことにより、住民は行政主体で計画されたまちづくりでは得られることのできない「自分たちでつくった」という「誇り」を持つことができる。それは住民一人一人に対し、まちへ「思い入れ」を生み、やがて「まちを守り、まちの質をさらに向上させよう」という意識を定着することができる。それはまちが持続可能性を持つことにつながる。三宮中央通りの場合は「まちづくり協議会の設立」によって住民たちの思いが結実し、通りの開通から4年を経た現在、調和の取れたまちなみは多くの購買層を惹きつけ、さらなる魅力をもったまちなみへと成長し続けている。


4-2 意味のあるデザインの説得性

しかし、「住民主体」のまちづくりであっても、住民の意のままに計画が進められてきた訳ではない。そこには空間デザインをより質の高いものに導くための仕組みも取り入れられていた。ここで留意されたのは、いかに意味のあるデザインを取り入れることができるか、ということであった。意味を持たせるための手法として、「歴史的経験を生かす」「時代への眼差しを持つ」ということが思考された。
「歴史的経験を生かす」点においては、三宮中央通りの周辺部が持つ都市の道路の骨格を歴史的に捉えなおし、その事実を舗道のタイルのパターンに生かす、という手法が用いられた。「時代への眼差しを持つ」という点においては、「出会いの門」のコンセプトに、価値観が大きく変わりつつある現代の姿を表す「反転」というキーワードを用い、それを1本の巨木を縦割りに4分割し、それらを反転させるというデザイン手法に示された。さらに「反転」は「三宮裏線」から「三宮中央通り」へと変貌した、通りの名前とも連動している。
その他にも、タイルの色彩のトーンを「人肌」を基準に決めた点、異国情緒の雰囲気を持つ旧居留地に隣接していることから、街灯に青銅色のガス灯のイメージを持つデザインのものを採用したこと、こういったカラーイメージやストリートファニチャーなどに対しても、その選択における明確な理由を示すことができている。
このようなデザイン手法は、まちづくりのアドバイザーや空間デザイナーの豊富な知識や社会に対する敏感性と同時に、柔軟性が求められる部分でもある。
また、意味を持つデザインは、様々な意見が飛び交う住民主体のまちづくりの中で、強い説得力を持つことができ、合意形成も得やすくなる。さらに、まちなみに物語性を持たせることができ、将来においても語り継がれる力を持ち得ることができる。


4-3 まちを活性化させるための仕掛け

まちを活性化するための仕掛けは、まちを持続させるためにも欠かせないものである。しかし、その仕掛けは、既存の事例からの借り物ではなく、コンセプトとメッセージ性を持った独自のものでなくてはならない。「バンブーボールプロジェクト」は「出会いの門に新たな命を吹き込むこと」「国際交流と世界平和」という明確なコンセプトに基づいて行われた。
また、このプロジェクトは「出会いの門」と「バンブーボール」という2つの芸術作品をジョイントさせる、というデザイン実験の仕掛けが組み込まれており、これは同時に「出会いの門」が従来のモニュメントのような、単に「見るだけのもの」からさらに「使うもの」としての側面を持ち得ていることも示している。
さらに、プロジェクトには三宮中央通りの住民だけではなく、神戸に住む外国人や子供たちといった、住民以外の人々も一緒になり、世代を超えて参加できるプログラムとした。
また、神戸の人々がブビンガの苗を植えにガボンを訪れ、200年後に朽ち果てたモニュメントの再生のために、成長したブビンガが再び神戸にやってくる、というストーリーをもった「ガボンプロジェクト」には、神戸とガボンの国際交流と世界平和、そして次世代に引き継ぐという強いメッセージを持っている。




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