図13

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図14

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図15

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2-6 顔の印象

ロボットの顔のデザインは、このロボットの人格を決定する重要な要素であり、人と機械のコミュニケーションというインタラクションのデザインでもある。
幼児の顔をモチーフに、不気味の谷に入らぬよう機械人形的な造形を心がけた。
顔の造形は能面同様に微妙な角度の違いや光のあて方で全く表情が変化した。0.5mm単位のディティールの差で怒った顔にもなり泣いた顔にもなるため、何度もモデルを試作し試行錯誤を重ね、笑顔になるようデザインしていった。
さらに、頭部は当初スキンヘッドに少し前髪のある乳幼児のイメージでデザイン検討を進めたが前述の不気味の谷を脱することはできなかった。ロボットにおける スキンヘッドは、かわいい記憶を通り越しホラー映画の怖い記憶を想起させるようだ。試行錯誤の上の結論として、人がなんの抵抗も無くロボットと接するためには、頭部に何らかの造形を追加するデザインが必要であるとわかった。帽子やヘルメット、髪型などの要素を追加する造形処理である。そうすることで頭部の違和感が気にならず、顔に意識が集中できるようになった。(図13)


2-7 3頭身プロポーションの骨格フレームデザイン  


「目は口ほどにものを言う」という言葉通り、人型ロボットデザインで目は最重要課題である。安価な人形のようなマンガ的な表情にならないように、人間の眼球を単化し忠実に再現した。瞳の奥の黒目を意識した多層構造とし、眼球の中の奥行き感を表現した。近づかないとわからない処理であるが、無いとあるでは顔の表情に雲泥の差がある。
また、チラシを配布する対象となる人を探している状態、見つけた状態を人に分からせる工夫を行った。眼球の奥に内蔵した2つのLEDを、探している時は左右に点灯させ、見つけた時は瞬きをする感じで同時点滅させることで、人とのインタラクションを向上させた。
さらに、音声=声を発生する際には、口元に円弧状の光を点灯させた。(図14)
以上のように人とロボットのより良い関係を創造するため様々なデザインを施した。

2-8 ロボットに心が宿る  


人は人をつくりたがる生き物であり、人形や彫像、肖像、マネキン等様々な人を 模した物をつくり、魂を込めてきた。今回の開発で最も驚いた点が一つある。ロボットに様々なデザインを施してきた結果、開発者自らが感情移入し、まるでロボットが幼児であるかのように扱い始めたことである。
開発当初、フレームとモーターむき出しであった頃は、頭部を片手で鷲づかみにし手荒く扱っていた。しかし、外装である顔や体を装着し、微細な目を埋め込んで行くに従い、このロボットを両手で下から支えるように扱いだした。まるで幼児を抱きかかえるように。さらに、動きを加えて目や口元の光による表情を付加していくに従い、ロボットを「この子」と呼んでいる自分に驚いた。
人形に魂を込めるように、様々なデザインを施すことでロボットに魂を込めた。
結果、開発者自らが感情移入しロボットに心が宿ったかのように錯覚してしまう。
機械が人の感情を動かし、情動を持つ。これこそ、エモーショナルデザインである。


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