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3 調査結果と考察

 図4、図5および図6は、調査対象5地区の物理量であり、水平面照度・鉛直面照度および、色温度、輝度の平均値を物理量ごとにグラフ化した。各地区ごとの照度・色温度・輝度は、明らかに特徴ある傾向が見られ、各物理量ごとの考察を以下に整理した。


3−1 照度についての考察


図4 調査対象地区ごとの平均水平面照度と平均鉛直面照度

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図4 調査対象地区ごとの平均水平面照度と平均鉛直面照度

 調査地区において水平面照度(Horizontal illuminance)および鉛直面照度(Vertical illuminance)(以下平均水平面照度は、「H」で表記し、平均鉛直面照度は、「V」で表記する)。の最も高い地区は、三宮駅北側のH:47.16lx、V:39.64lx、であった。 次に双方の平均照度の高い数値順に南京町は、H:26.56lx、V:28.23lx、旧居留地は、H:12.4lx、V:20.2lx、メリケンパークは、H:7.5lx、V:5.26lx、北野町は、H:3.54lx、V:4.75lx、となった。
 図4から、三宮駅北側およびメリケンパークは、水平面照度が高く、北野町・旧居留地・南京町地区は、鉛直面照度が高かった。両照度の最大差は、旧居留地の7.8lxであり、続いて三宮駅北側は7.52lxとなった。その他の地区は、約1〜2lx前後となり比較的差はみられなかった。
 本調査では、測定地点おける水平面照度と鉛直面照度の両照度を計測したが、数回の調査により「鉛直面照度」のほうが有効であると思われる。夜間景観の空間を評価することから、観察者の顔面に入射する光束が主な物理量としての刺激であること。水平面照度の測定地点が街路灯付近であれば、街路灯からの直下照度と近似した、急激な測定値の上昇があるなどが主な理由である。以下の調査による照度値は、鉛直面照度を採用する。
 調査地区において最高照度値は、三宮駅北側となり、最低照度値は、北野町であった。双方の地区の照度差は、鉛直面照度で約35lxであり、約8:1の物理量の差となった。三宮駅北側は、既往研究*4より電照式看板が多数設置されており、高照度となった要因であると考えられる。また、北野町は住宅や雰囲気のある飲食店が混在する地区であり、三宮駅北側と反対に電照式看板も少なく低照度地区となったと考えられる。さらに図 1から、両地区は隣り合った地区であるが、双方の地区の照度差からも明らかに異質なイメージをもつ照明空間であると考えられる。
 調査対象5地区の照度測定値とJIS照度基準*5を参考に比較してみた。屋外照明の基準場所となる通路、広場、公園における商店街(繁華街・一般)照度適用範囲は、10lx〜100lxとなっている。また、あたらしい明視論*6では、明所視から薄明視の境界が、10lxとなっている。これらの基準値から照度における低照度の数値として、「10lx」が考えられる。したがって、調査対象5地区の照度測定値10lx 以下の照度地区は、北野町・メリケンパークとなり、低照度地区となる。三宮駅北側は、高照度地区と考えられ、南京町、旧居留地についてはどちらでもない中間の照度地区であると思われる。調査結果から、神戸市三宮周辺地区における各地区の照度は、45lx以下の明所視帯から約5lxの薄明視帯における照度分布であり、さらに、調査対象5地区は、「低照度地区」、「高照度地区」、「中間の照度地区」によって構成されていることが明らかとなった。


3−2 色温度についての考察


図5 調査対象地区ごとの平均色温度

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図5 調査対象地区ごとの平均色温度

 図5から、調査地区において平均色温度の最も高い地区は、メリケンパークの4743.3Kであった。以下に色温度の高い数値順に三宮駅北側は、4123.7K、旧居留地は、3620.9K、北野町は、2888.1K、南京町は、2331.4Kとなった。
 色温度に関しては、夜間景観を構成している人工光源の直接光と人工光源によって照らし出されている光、すなわち間接光であることから*7、調査対象となった夜間景観に主に使用されている光源を特定することが可能であると思われる。人工光源の色温度は光源メーカーのカタログ*8に表記されており、以下に色温度の範囲を示した。高圧ナトリウム灯系(2150K〜2500K)、白熱灯系(2850K〜3000K)、蛍光灯系(4200K~6500K)水銀灯系(3900~5000K)である。
 これらの数値を参考に各地区の平均色温度の比較検討を行った。メリケンパークは、ランドマークの投光や街路灯による照明方法から「水銀灯系」を主に使用している色温度地区と考えられる。続いて、三宮駅北側は、多数の電照式看板による「蛍光灯系」。旧居留地は、ハロゲン投光器によるビルの外壁面投光と一般的な街路灯に使用されている水銀灯による「白熱灯系」と「水銀灯系」。北野町は、落ち着いた雰囲気の店舗に採用される「白熱灯系」。南京町は、街路灯に使用されていた高圧ナトリウム灯と赤を基調とした看板や店舗などまさしく「高圧ナトリウム灯系」であると考えられる。
 調査結果による、調査対象5地区の平均色温度からは、主な使用光源が読みとれ、夜間景観を構成している光源は、それぞれの地区の特徴を形成していることが明らかとなった。太陽光によって照らし出されている昼の景観ではなく、人工光源による夜間景観を構成していることから、平均色温度の特徴は、照明空間の重要な特徴であると考えられる。


3−3 輝度についての考察


図6 調査対象地区ごとの平均輝度

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図6 調査対象地区ごとの平均輝度

 図6から調査地区において平均輝度の最も高い地区は、南京町の1418.7cd/m2であった。以下に輝度の高い数値順に三宮駅北側は、481.98cd/m2、旧居留地は、275.64cd/m2、北野町は、256.33cd/m2、メリケンパークは、64.37cd/m2となった。
 南京町は、他の地区と比較すると輝度値が非常に高く、調査対象5地区のなかでは特殊な地区と言える。南京町は神戸を代表する中華街であり、中華料理店などが並ぶ活動的な照明空間が想像される。ここでも照度と同様に南京町は、旧居留地に隣り合った地区であるが、約22:1の輝度差からも明らかに異なった照明空間であると考えられる。最低輝度値のメリケンパーク地区は、ランドマークとなる海洋博物館、ポートタワー、ホテルオークラなどのライトアップによる間接光が主となる夜間景観の構成であり、さらに視対象となる夜間景観と物理量測定地点が調査地区の中で最も離れている。よって最低輝度地区および低照度地区になったと考えられる。
 旧居留地と北野町の輝度値は、ほぼ同様の測定値であった。双方の地区を平均化した輝度値(265.99 cd/m2)を他の3地区と比較してみると、三宮駅北側は、約216.0cd/m2の輝度差があり、最高値を示した南京町は、約1152.7cd/m2の輝度差となった。最低の輝度値であるメリケンパークは、約201.62 cd/m2であった。旧居留地と北野町の平均輝度値を基準とすると、三宮駅北側が、高輝度側となり、メリケンパークは、低輝度側にそれぞれ約200cd/m2の輝度差となった。南京町は、例外的に輝度が高く、超高輝度地区であると思われる。
 調査結果から、前述の照度に関する考察と同様に、神戸市三宮周辺地区における調査対象5地区の輝度は、「低輝度地区」、「高輝度地区」、「中間の輝度地区」、および「超高輝度地区」によって構成されていることが明らかとなった。



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