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4 照度を基準とした色温度・輝度に関する考察

図7 照度を基準にした色温度・輝度との関係

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図7 照度を基準にした色温度・輝度との関係

 本研究によって神戸市三宮周辺地区における調査対象5地区の平均物理量(照度・色温度・輝度)の測定値をもとに分析検討した結果、明視機能として最も重要である照度を基準にして色温度・輝度の関与を比較して考察した。
 図7は、縦軸に鉛直面照度、横軸に色温度および輝度の測定値を各地区ごとにプロットして示している。色温度の横軸は、一般的な屋外照明に使用されている人工光源が、2000K以上であるため2000Kを原点とした。以下に各地区の物理量に関する考察を整理した。

1)北野町
 北野町は、「低照度地区」および「低輝度地区」であり、平均色温度は、2888.1Kと白熱灯に近い色温度を示しており「白熱灯系」の地区である。全てが(図7)左下の原点に近い部分に集まっていることから、総合的に物理量が最も低い地区であると考えられる。この地区は、白熱灯を中心に弱い傾向の光、すなわち光束数の少ない光源によって構成されている照明空間であると考えられる。

2)三宮駅北側
 三宮駅北側は、「高照度地区」および「高輝度地区」であり、平均色温度は、4123.7Kと蛍光灯白色(4200K)に近い色温度を示している「蛍光灯系」の地区である。輝度は、南京町に次いで高く、照度は調査地区として最も高い、この結果より明視機能における物理量が最も高い地区であり、さらに「蛍光灯系」を中心にした大量の光源によって構成されている照明空間であると考えられる。

3)南京町
 南京町は、「中間照度地区」および「超高輝度地区」であり、平均色温度は、2331.4Kと調査地区では、最も低い色温度となった。この測定値は、高圧ナトリウム灯の色温度範囲を示しており「高圧ナトリウム灯系」の地区である。照度につては、中間照度地区であるが、輝度が非常に高く、色温度が最も低いことから、主にオレンジ系や赤系の強烈な光によって構成された照明空間であると考えられる。

4)旧居留地
 旧居留地は、「中間照度地区」および「中間輝度地区」であり、平均色温度は、3620.9Kと前述の考察から「水銀灯系」と「白熱灯系」混在の地区である。全ての物理量に関する測定値が、(図7)の中間帯に分布しており、他の地区よりも平均的な照明空間であると考えられる。オフィスビルが建ち並び、整然と区画された本地区は、公共性の強い空間であり、同様の傾向が照明空間にも現れていると考えられる。

5)メリケンパーク
 メリケンパークは、「低照度地区」および「低輝度地区」であり、平均色温度は、4743.3Kと「蛍光灯系」もしくは「水銀灯系」を想像させるが、前述の主な照明方法から「水銀灯系」の地区である。照度および輝度は、北野町と同様の傾向であるが、色温度は調査地区の中で最も高く、間接光による微弱で青白く、クールな感じの照明空間であると考えられる。
 さらに(図7)色温度と照度の関係を示した調査対象5地区の○印のプロットから、旧居留地を中心に他の4地区が、放射状にほぼ均等な距離で分散してることが分かる。これら物理量の傾向からも調査対象5地区は、明らかに特徴のある照明空間が存在してると思われる。さらに色温度の違いは、前述内容より主に使用されている光源の違いであるとも言える。したがって、夜間景観においては、光源の色温度が、景観の色彩に強く影響すると考えられる。すなわち各地区の個性的な夜間景観は、色イメージの空間*9であると言える。つまり、神戸市三宮周辺地区における調査対象5地区は、物理量である照度・色温度・輝度の平均値から、それぞれ特徴のある照明空間を構成しており、また、照度を基準とした色温度および輝度による分析検討の結果においても、各地区の夜間景観は、おのおの特徴ある照明空間イメージを形成していると考えられる。
 ここで、照度と色温度の快適性に関してA.A.Kruithofによる研究では*10、特に100lx以下の照度において、ほぼどのような色温度でも不快域となることが示されている。本研究結果から調査地区の照度は、45lx以下に分布しており、また、色温度も2331.4K~4743.3Kにおいて分布している。引き続き行われる、空間イメージの心理的評価を勘案すると、本研究における屋外照明の照度と色温度の快適性に関する研究結果を得ることが可能となる。



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