屋外照明の多面的な評価研究を行うために、近隣都市神戸市三宮周辺地区の夜間景観の特徴に着目した。同地区は5カ所の特徴ある地区が存在する。1)北野町、2)三宮駅北側、3)南京町、4)旧居留地、5)メリケンパークである。既往研究では、これらの地区において、照明デザインの構成要素を調査し、さらに本研究では、調査対象5地区の夜間景観となる屋外照明の物理量(照度・色温度・輝度)を各地区ごとに調査、分析検討を行った。
(1)調査対象5地区の照度は、45lx以下の明所視帯から約5lxの薄明視帯における照度分布であった。また、3段階の照度レベルでによって構成されており、「低照度地区」、「高照度地区」、「中間の照度地区」となった。
(2)調査対象5地区の平均色温度から、夜間景観を構成している主な使用光源が読みとれた。メリケンパークは、「水銀灯系」。三宮駅北側は、「蛍光灯系」。旧居留地は、「白熱灯系」と「水銀灯系」。北野町は、「白熱灯系」。南京町は、「高圧ナトリウム灯系」であると考えられ、それぞれの地区の特徴を示す、異なった人工光源が使用されていた。
(3)調査対象5地区の輝度は、以下の4段階の輝度レベルであり、「低輝度地区」、「高輝度地区」、「中間の輝度地区」および「超高輝度地区」によって構成されていた。
(4)調査対象5地区の物理量(照度・色温度・輝度)は、おのおの地区によって特徴のある傾向を示し、物理量による各地区の照明空間イメージも異なっていると考えられる。特に色温度による各地区の明らかな測定値の差は、色空間によるイメージの差とも言える。したがって、調査対象5地区は、それぞれの地区に特徴ある空間イメージが存在すると考えられる。
本研究結果から、調査対象5地区における物理的要因を明らかにすることができた。また、引き続き行われる夜間景観のイメージを定量化するための心理的な評価空間としても有効な研究対象地区であるとが確認された。
なお、本研究は、平成14年度~平成16年度 科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))「屋外照明の照度・色温度・輝度と空間イメージに関する実験的研究」課題番号:14550599の研究補助金による研究成果である。
*1― | 長山信一・中島芳雄・高松衛 :歴史的景観を演出する景観照明の印象評価および因子構造に関する考察 照明学会誌 Vol.87 No.5 pp.319~327 (2003) |
---|---|
*2― | 中村 肇・唐沢宜典:照度・色温度と雰囲気の好ましさの関係 照明学会誌 Vol.81 No.8A pp.69~76 (1997) |
*3― | 相澤孝司:神戸市三宮周辺地区の屋外環境照明に関する基礎調査 芸術工学会誌 No.15 p.21 (1997) |
*4― | 相澤 孝司・木谷 庸二・山口 眞理 :
屋外環境照明のデザイン構成要素と空間イメージに関する研究 財団法人 ユニオン造形文化財団 調査研究助成報告集 (1999) |
*5― | JIS照度基準(Z9110-1979) |
*6― | 照明学会 あたらし明視論 (1966)(改訂版) |
*7― | 都市の夜間景観の演出 光とかげのハーモニー 都市の夜間景観研究会編著 大成出版社 (1990) |
*8― | National ランプ総合カタログ (2005) |
*9― | 小林重順 景観の色とイメージ ダヴィッド社 (1994) |
*10― | A.A.Kruithof:Tubular Luminescence Lamps for General Illumination,Philips Technical Review 6, pp.65-96 (1941) |
付記 : 図 3 調査地区写真画像 撮影 旦 昌弘