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5  講演会の実施

5―1 「世界遺産登録の経緯とその後の課題について」

図5-1 近藤久善氏による講演会(公民館にて)

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図5-1 近藤久善氏による講演会(公民館にて)

1995年に世界文化遺産に登録された白川郷では、集落の保存・整備のために住民や行政がさまざまな努力を行なっている。こうした活動の内容は、2005年度に調査した王家大院のようにこれから世界文化遺産登録を目指す場所にとっては重要な先行事例であり、保存・整備手法を考える上での手がかりになるはずである。このような視点から、白川村でのプロジェクト2日目の夜に白川村教育委員会世界遺産対策室文化財係の近藤久善氏を講師にお迎えし、「世界遺産登録の経緯とその後の課題について」と題した講演会を実施した(図5-1)。

近藤氏の講演では、(1)白川村の変遷と保存活動に至った経緯、(2)「白川郷の自然環境を守る保存会」や「合掌造り保存財団」の役割と財源などの運営形態、(3)集落・茅葺き民家保存のための行政的上の制度、(4)世界遺産登録を契機に現れた問題点、特に観光化にともなう問題と対応策などについて具体的な報告があった。

5―2 「文化遺産保護に向けた国際協力の現状と課題」

図5-2 西和彦氏による講演会(神戸芸術工科大学吉武記念ホールにて)

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図5-2 西和彦氏による講演会(神戸芸術工科大学吉武記念ホールにて)

また、2005年度に始めた国際共同プロジェクトが3カ国を一巡して一区切りつくため、この機会をとらえて文化遺産保護に向けた国際協力の現状について俯瞰しておくことも必要であろうと考え、プロジェクト最終日に文化庁から文化財調査官の西和彦氏を講師としてお迎えし、「文化遺産保護に向けた国際協力の現状と課題」と題した講演会を開催した(図5-2)。

西氏の講演では、(1)世界的な文化遺産保護の歴史と最近の動向(地域性の重視、各地域の実情に即した受容・解釈の必要性)、(2)世界遺産条約の問題点(登録件数の地域間是正・不均衡是正、地域における代表性をどう評価するか)、(3)国際協力の実例(子供たちへの教育、大学・専門家間のネットワーク、アジアの文化遺産管理に関する大学間国際協力)、(4)文化遺産保護をめぐるテーマの多様化(気候・地球温暖化と文化遺産、観光との共存)などについて、具体的な報告があった。

近藤氏および西氏の講演では、いずれも3大学の参加者たちを交えて活発な質疑・意見交換が行われ、有意義な時間をもつことができた。

注・引用文献

*1―
白川村教育委員会編『白川村合掌造集落』1987年による。
*2―
宮澤智士『白川郷合掌造Q&A』智書房、2005年

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