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インクジェットの可能性として、偶然性を活かした染めをベースに「イメージ」を重ねることを考え、あえて「コラボレーション」という手法をとることにした。まずベースになる地染めを染色作家である加賀城健氏*4に依頼。絵画的完成度を高めるために小さいが厚みのあるパネルを作り、制作の方向性を十分検討した上で、加賀城氏は感覚を重視して多種の染めを展開した。素材としての布も様々なものを使用。それを受けて、筆者は写真画像を重ねる。その場合、モチーフも写真撮影も、仕上がりをイメージして行う。モチーフは、掌に乗るサイズのアンティークで「物語性」を重視した。そのようにして、30点以上の試作を行ったが、最終的に発表したのは約半数になった。(写真6~10)
コラボレーションはけっして新しい方法ではないし、工芸やデザインでは共同で制作するのは当然でもある。しかし、今回のような組み合わせは珍しく、ギャラリーで観客の反応はとても良いものだった。アート領域におけるテキスタイルの表現として、この新しい試みが評価された。