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インクジェットプリントの技法で制作をするにあたり、素材の質感を強く感じる立体を布の上に再現することと、それを用いて新たに実物とは違った新しい触感を持った立体を制作することを研究目標とした。素材感布として、今回はざっくりとした織目のウール生地や木ビーズを使った布人形を制作した。(写真18-a,b)
他に、布の質感の違いを試みるために4つの素材を使用して比較検討した。今回の目的はマスコット人形の制作である。その使用用途から、出来上がった立体の肌触りが良いようにという理由でこれらを選択。表と裏の画像を利用して両面に絵柄があるマスコット人形として完成させた。(写真19-a,b)各素材の特徴とプリント結果は以下である。
- A.
- 綿別珍
柔らかく肌触りがよい起毛素材。生地の色は漂白した白。
色みの強い画像を細部まで鮮明にプリントできた。
- B.
- 綿サテン
特有の光沢とつるつるした触感がある。生地の色は漂白した白。
今回一番精細にプリントできた素材である。色味は綿別珍に比べると若干薄い。 - C.
- 綿オックスフォード
生地の目は粗く、織目がはっきり見える。色は少し黄みがかった白。
色は薄く、少しぼやけた印象の画像になった。 - D.
- ウールモスリン
4つの中では一番薄く、生地目は細かい素材。表面は平坦でさらりとした触感。
生地の色は生成りで、全体的に粗くぼやけた画像になった。
この研究で使用したプリンターでは、今まで出来なかった厚い布もプリントできる。起毛素材やパイル素材、厚手のウールなどがプリント可能になった。しかし、同じ画像でも素材によって発色が異なる。また、プリントされる布の質感によって見え方が大きく変わる。特に中に綿を入れて膨らませることでその特徴が際立った。今回の目的には素材としては色みが強く、細部の質感まで表現できる綿別珍が一番適している。ただし色の薄い綿オックスフォードの持つ素朴な風合いも別の用途で使用するには十分魅力的な素材である。
デジタルプリントでは容易に画像の大きさを変えてプリントすることができる。続いて、クッション、マスコット(小)を作成した(写真20-a,b)他に、別バージョンのデザインも作成した。(写真21-a,b)