7.まとめ

今回参加したデザイン・フェスタは、教育的な見地から販売という体験を通して学生のクリエーティビティを刺激するには、比較的に適切な「場」であったと思われる。
先にも述べたが、デザイン・フェスタは、出展に際し内容審査がなく、主催者側の出展基準が非常に緩やかである。オリジナル作品で、他人に迷惑がかからないという基準があるだけで、表現ジャンルや、技法、参加者の国籍、性別、年齢、プロアマや職業などはいっさい問わない。
このような無審査出展というのは希有であり、多くのコンペや展覧会は、通常は出品にあたり特定の審査員による審査を設けている。この審査は一方で、コンペや展覧会の趣向や傾向といったものを決め、作品のレベルを一定以上に保つ役目を果たしている。出品者からすると、合格の時点で主催者から作品が認められ、お墨付きをもらうことになる。
デザイン・フェスタには、お墨付きなどというものはない。代わりにここでは、幅広い参加者・来場者の多様な個性が互いに刺激しあい、無数の共感と切磋琢磨する無限の可能性が生まれる。「異文化コミュニケーション」という表現があるが、まさに世代や国境を越え、さまざまな感性がひとつの空間に異なる花を咲かせる。
会場にいると、似たもの同士が集まるよりも大きく異なった個性が出会うほうが、飛躍のエネルギーはより強大であると実感できる。
私たちは、デザイン・フェスタへの参加にあたり、学生の自主性を最大限に尊重した。
声をかけた学生に参加を強制するのではなく、まったく自主的な自由参加であったこと。また、作品の内容も基本的に学生個々にゆだねた。
研究としては販売を体験することにポイントを置いているが、各学生の参加姿勢をそれに強要することはいっさいなかった。したがって、先にも書いたが、展示のみで販売しない学生もいた。
このような自由な姿勢こそが、今回の機会を自力で自分のものにし、必要なものを必要なだけ、参加学生それぞれが吸収することを可能にしたのではないかと確信する。
戦後、やはり無審査の展覧会であった『読売アンデパンダン展』が当時の美術界にもたらした功績は大きかったが、21世紀の今、閉塞する時代にあり、自由度の高い表現の場はますます重要になる。そしてこのことは、大学教育にもそのまま当てはまると考えられる。


追記

本研究に、以下25名の学生が快く協力してくれました。感謝します。
<プロダクト・デザイン>千井佑介、二宮靖夫、魚住尚正、辻直樹、酒井風吾、氏家崇、川崎知香、戸上裕美
<ファッション・デザイン>新井純子、池本大祐、高瀬八一、野田春喜、広瀬可奈子、増田かおり、岡崎由夏、西川ひとみ、松木敬太郎、鳥山あゆみ、大北美生、齊藤未来、野上秀、橋本恵、菊池恵美、久住聡、乾二瀬



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