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2.ファッションと都市・文化・芸術

  21世紀のファッションが隣接した他分野にどのような影響を受け展開してきたのか。それを論考するのがこの章の目的である。
 特に建築とファッションとの呼応について、近年注目されることが多くなった。とはいえ、21世紀と構えても未だ10年もたたない。現在進行中の出来事をレトロスペクティブに総括することは不可能である。そこでここではより限定的な断片を切り取り、その中に状況を垣間見て、今後の指標をえるべく意図している。


2-1.衣服/建築


 2006年のMOCA(ロサンゼルス現代美術館)から始まった「SKIN+BONES:1980年代以降の建築とファッション」展において、同展キュレーターのデビッド・ホッジは、造形物としての衣服と建築との共通性を探っている。展覧会の構成においては「創造的プロセス」「形態の生成」「構築の技法」等がキーワードに選ばれ、特に「脱構築」という概念が強調されている。建築における「脱構築」とは徹頭徹尾システムにこだわることにより、慣習的な建築体系を内側から破壊する方法論のことであり、フランスの哲学者、デリダの思想を意識したものである。ホッジはこうしたピーター・アイゼンマンら建築家が意図した方法論と、川久保玲、山本耀司、マルタン・マルジェラらファッションデザイナーが襟や袖などの衣服のエレメントを置換、変形して仕立てる方法論を並置している。
 ただし一つ残念なことに、展覧会という性質上やむをえない事とは言え、展示されているのは衣服自体と建築模型、写真が中心である。ファッション、建築共に主体となる「身体」との係わりが提示されていないのである。


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