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5.まとめ

 本研究は、21世紀初頭の各デザイン分野の新たな事象を考察したものである。
 20世紀は、産業革命を期して近代デザインが誕生し成熟した時代であるとされている。日本は、効率重視の工業製品産業を中心に高度成長し、大衆消費、大量生産を背景に多くの人々が安価で「良質」な製品を容易に入手できる環境を創った。各デザイン分野においても、ファッション化の波に乗り、「流行」という魔術的変化を美化し、生活者を消費者と名づけ、「消費は美徳」と同調させ、過度の浪費を生み出してきた。製品は表層の装飾に終始し、服飾を中心に生活雑貨や家電製品、車、食品、住空間などさまざまな領域へと広がり、私たちの生活に浸透していった。しかし21世紀の社会環境は、20世紀の反動か、人間の生命保持に危機感を与え、産業の長期低迷を引き起こし、少子高齢化という人口構造自体にも変革をもたらした。これらは日本のみならず地球規模での課題としてあげられている。
 そのような背景から21世紀の新たな事象を垣間見ると、IT進化の影響は絶大で、過去に経験のない社会構造や環境を創りあげつつある。IT進化と普及はさらに加速化し、情報の共有化を世界規模まで広げ、個人単位での情報量を増大させ、経済産業構造や労働環境までも根底から変革させている。デザイン分野においても、その影響を強く受け、他分野との関わりや個への対応を容易にさせるなどその存在を無視することはできない。
 21世紀初頭の各デザイン分野の事象を考察すると、地球規模での社会・市場背景、人間・身体・固有性、人間尊重の生活環境、他分野とのコラボレーリョンの中での新たな視点、テクノロジーの有効活用、社会構造やデザイン構造の再構築などがデザインの視点としてあげられている。
 時間と空間を流行という切り口で捉えた20世紀の経済構造やデザインに対し、21世紀は、上記の視点を踏まえながら、ファッション環境デザインの方向性を見出していきたいと考える。

注・引用文献

*1―
アパレルデザインコースは後にファッションデザインコースに改名。工業デザイン学科は後にプロダクトデザイン学科とファッションデザイン学科に分科
*2―
「AXIS・NO.96」、株式会社アクシス、2002年3/4月号より引用
*3―
「d long life design・vol.4」、D&DEPARTMENT PROJECCT、2005年8/9月号より引用

参考文献
「AXIS・NO85」、株式会社アクシス、2000年5/6月号
「AXIS・NO100」、株式会社アクシス、2002年11/12月号
「芸術新潮」、新潮社、2000年8月号


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