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写真4

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図17

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写真5

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図18

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写真6

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図19

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図20

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図21

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写真9

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図22

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写真10

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図23

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図24

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写真12

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図25

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写真13

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図26

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2.七佳村の地理位置及び伝統服装の形式分類

老七佳は来義郷と春日郷の境に位置し、力里溪の上流の左岸にある。周りは熱帯林に囲まれている。石造の住居は急斜面地に建てられ、また村の周囲には竜骨木が植えられ、天然の城壁となっている。つまりこの村は城砦そのものなのである。パイワン族の伝統的石造住居が完全な形で残されており、手工芸技術に優れた原住民の里として知られている。

2-1 七佳村の伝統服装の形式と種類

聞き取り調査対象及び分析対象とした伝統服装の提供者:(郭松75才。鄭超45才。)

七佳村で調査の対象とした伝統服装は数種類ある。女性:郭松の孫娘の長衣一着(PG)、郭松夫人長衣一着(PW)、郭松の三番目の娘の長衣三着(PW)、スカート(PWs)一着。男性:カセンと呼ばれるズボン形のものが二着(PMp)、長袖短上衣(PM)一着、袖無し短上衣(PM)一着。(註:Pはパイワン、Gは少女、Wは女性、Wsは女性用スカート、Mpはカセン、Mは男性の意味である)まずそれぞれの材質、仕立、文様構成について下記に記す。

2-1-1 PG(写真4・図17)

材質:
青の平織り綿布、黒の平織り綿布、多彩ガラスビーズ玉、金属ボタン、金具。
仕立:
青綿布地裁ち縫い。首ぐり・袖口・脇・背中に、黒綿布裂を縫い付け、その上に橙、黄、緑等の多彩なビーズ玉で刺繍を施す鮮やかな装飾技法を見せている。衣服形態の構成原理はルカイ族と近似しているが、明らかに漢民族の長衫の影響を受けた衣である。
文様:
文様は六つの種類から成り立つ。これらの図柄は全てガラスビーズ玉で作られている。PGaの文様は衣服の中央に六つの人頭が一列に並んでいるうちの一つである。その両脇に三角紋がビーズ刺繍されている。人頭紋はパイワン族の伝統衣服においては、よく目にすることができるが、形態の表現方法の違いにより、その意味性も異なる。一般的には祖霊信仰観念に基づいて作られたものとku-masと呼ばれる宇宙神、或いは出草(頭狩り)による功績を示すもの、また日常生活において頭部に装飾するものを具象化したもの、などに分けられている。PGaの形態から見ると、頭の上に一つのアーチ状のようなものが冠られており、そのアーチ状の下にそれぞれ四つの線で作られている。このような形態から判断すると、このアーチ形のものは一種の装飾品であると考えられる。こうした人頭紋は、パイワン族の生活習慣に見られる頭に飾る装飾品を具象化したものであると考えられる。
 一方、同じ人頭紋を表現するものとして見られたのはPGcのようなものである。PGcの文様はこの服装の中に九つ表現されている。よく見るとPGcの人頭紋の下にPGedの文様が一体化しているように見られる。即ちPGeの三角文様は身体に着ている服装に、PGdの米字のような形態は下半身やその足の形となっている。PGcdeの文様を一緒に組み合わせる表現は、原住民の祭日時に人が互いに手を繋げ、歌舞に興じる様子を連想させる。また、PGbのような文様は先に述べた霧台のルカイ族に見られる蛇のような文様と酷似している。しかし、ここで見られた表現方法は三角形の単位を用いており、ビーズ玉で一つずつ丁寧に刺繍されている。
 最後にPGfの星状のような文様は、パイワン族の伝統文化から見ると、太陽の表現であると考えられる。パイワン族の伝説神話では太陽が壺の中に赤と白の2つ卵を産み、そこから首長家の始祖が生まれたという伝説がある。

2-1-2 PW-1(写真5・図18)

材質:
黒ネル布、綿、多彩ガラスビーズ玉、日本銭、プラスチックボタン。
仕立:
黒ネル布裁ち縫い仕立て、首ぐり・袖口・前打合に多彩ガラスビーズ玉で刺繍を縫い付ける。
文様:
用いられた技法は上記で述べたPG式と同じで、服の中央縦一列にPW-1aの文様が施されている。宇宙人のような表現方法は非常に個性的で、伝統服装を着た男性の姿を象ったものであると考えられる。注目すべきところは、その頭の表現である。顔はほとんど見えず、三本の線が強調されており、被り物に挿された三本の熊鷹の羽を表現しているものだと推測することができる。
 熊鷹の羽は、かつてパイワン族の社会において頭目の頭を飾るものであり、特権を示すものとされていた。一般の平民たちは頭目の許可なしでは使用することはできなかった。頭目以外に、頭目の家系に属する人も使用することができたが、その長さは頭目が使用するものより短いものであった。また、男性祭司や女性祭司にも使用が許された。この服の本来の持ち主は女祭司であり、こうした文様が使われた背景には、パイワン族の社会身分を服飾に示す風習があったと考えられる。同じ人紋と関係するものにはPW-1cdefが挙げられる。いずれも生活風習、信仰概念を表現しているものと考えられる。特にPW-1dの幾何学形のような文様は、祖霊を表現しており、パイワン族では広範にわたり使用されている。

2-1-3 PW-2(写真6・図19)

材質:
黒の平織り綿布、青の平織り綿布、多彩ガラスビーズ玉、日本銭、金具。
仕立:
黒綿布裁ち縫い仕立て、首ぐり・袖口・脇・前打合に多彩ガラスビーズ玉で刺繍を縫い付ける。
文様:
PW-2abのような文様を主要とする。奇怪な表現造形は宇宙人を連想させる。上下に正反を配し合体している形がこの服の上にいっぱい使われている。祖霊の信仰観念に基づいて作られたものであるのか、今後、分析を進めていく必要がある。PW-2cdの人形紋が一列に並んでいるのは、伝統服を着用しているかつて生活風景を描写しているものであると考えられる。

2-1-4 PW-3(写真7・図20)

材質:
黒の平織り綿布、裏生地に印された花紋綿布、青綿布、多彩ガラスビーズ玉、多色の木綿刺繍糸、金属ボタン。
仕立:
黒綿布裁ち縫い仕立て、袖口、前打合に多彩ガラスビーズ玉で刺繍を縫い付ける。
文様:
文様の構成は極めて簡潔である。それぞれ一列に並んだPW-3abの人紋である。これも、上記で見てきたパイワン族の祭日に、人々が一列に並んで歌舞する様子を表現したものである。ビーズ玉で文様が縫い付けられている部分は三箇所だけだが、素朴感であり、頭目家系で使われた女性の普段着であると考えられる。

2-1-5 PW-4(写真8・図21)

材質:
黒の平織り綿布、裏生地に印された花紋綿布、多色の木綿刺繍糸、布裂を縫い付け、その上に十字綉を用いた技法で刺繍を縫い付ける、貝玉、金属ボタン。
仕立:
黒綿布裁ち縫い仕立て、脇・袖口のところに十字綉の文様が白、黄、赤、緑の糸で刺繍なされている。
文様:
二種類の文様が成り立つ。PW-4aの文様は一つの単位として、繰り返し一列に配列されている。形態から見ると、壷と二匹の蛇が合体したものであると考えられる。壷(reretan)は昔から祖先が生まれるものとして、パイワン族の伝説の中で珍重されてきたものである。パイワン族にとって壷は祖先の象徴であり、一方では社会における地位を誇るものと見なされており、一般の庶民は保有することが許されていなかった。またPW-4bの文様は植物の形態を象ったものであり、パイワン族のみならず、ルカイや平埔族、漢民族にもよく使われている。このことから、漢民族や平埔族から伝来してきたものであると考えられる。

2-1-6 PWs(写真9・図22)

材質:
黒の平織り綿布、ガラスビーズ玉、日本銭。
仕立:
黒綿布裁ち縫い仕立て、裾のところに日本銭や多彩ガラスビーズ玉で刺繍を縫い付ける。
文様:
主にPWsaのような文様で構成されている。上述のPW-2aに見られたものと酷似しているが、この文様に具象化する人面紋が入れられている点が異なる。おそらく、人が祖霊と一体化して、舞踏する様子を表現していると考えられる。

2-1-7 PM-1(写真10・図23)

材質:
青の平織り綿布、多色の木綿刺繍糸、多彩ガラスビーズ玉、金属ボタン。
仕立:
青綿布裁ち縫い仕立て、ボタン止めが二つ一単位で、全部八つ組があり、また胸前、下半のところにガラスビーズ玉で文様が縫い付けられている。
文様:
中央一列にPM-1bの頭文様が、四個一単位で横に並んでおり、全部で16個見られる。その両脇に二人ずつPM-1aの人紋が配され、その文様は背中部分まで繋がっている。また、その下には三角紋のPM-1cに刺繍が施されている。この服の正面に立っている四人の頭にはそれぞれ二本の鷹羽が飾られており、この衣服は功績が優れた勇士の衣服であったと考えられる。

2-1-8 PM-2(写真11・図24)

材質:
黒の平織り綿布、人工シルク、多彩ガラスビーズ玉、金属ボタン。
仕立:
黒綿布裁ち縫い仕立て、服の形態に合わせて、袖口、裾などのところに菱形の文様がビーズ玉で刺繍されている。
文様:
PM-2aの文様は太陽を象ったものであり、PM-2cdの文様はいわゆる蛇身にみられる文様であろう。またPM-2bで見た人紋の頭に飾られている羽毛が四本あり、上述したPM-1aより二本増えている。着用者の身分が頭目の家系に属していたのか、或いは高い社会地位を持った者の衣服であると考えられる。

2-1-9 PMp-1(写真12・図25)

材質:
紺、黒の平織り綿布、多色の木綿刺繍糸、多彩ガラスビーズ玉、金具。
仕立:
紺、黒綿布裁ち縫い仕立て、左右の袴にはガラスビーズ玉で作った文様が多く織られている。
文様:
文様はPMp-1abcdから成り立つ。人頭紋はPMp-1bdの二種類あり、立ち姿で三本の羽毛を飾った人紋も見られる。この人紋は今までみた人紋と比べて、手を腰にあてているのが特徴である。その外に太陽を意味する半円形の文様もある。このズボン型(カセン)に表現された文様はパイワン族の社会身分を示すものであり、また、伝説神話との関係も深い。

2-1-10 PMp-2(写真13・図26)

材質:
黒の平織り綿布、多色の木綿刺繍糸、多彩ガラスビーズ玉。
仕立:
黒綿布裁ち縫い仕立て、袴の上部に十字綉が刺繍され、その両端に多色の木綿糸で織られた紐が縫い付けられている。
文様:
PMp-2aの人頭紋はku-masと呼ばれる宇宙神のものである。PMp-2bはある動物の姿であり、形態から見て鹿の造形であると考えられる。この動物紋は二匹を一つの単位としており、PMp-2dの文様と組み合わせたものが袴の上端に見られ、これは狩猟の風景を描写したものであると考えられる。また袴の中端にPMp-2cの人紋が一列に並んでいるのが見られ、これは祭日に人々が手を繋いで舞踏する様子を表現したものであると考えられる。

 

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