HELP
  • scrap book

表1

Larger

表1

5.総括

以上見てきた霧台村と七佳村で見出した両地の伝統服装の同異点について以下に記述し、両地の伝統服装にみる特色や文様を位置付けたい(表1)。

5-1 霧台式

伝統服装に使われる技法は主に布を切抜紋に裁ち、布裂にアップリケ刺繍やガラスビーズ玉の刺繍、多色の木綿刺繍糸を使用する直線繍、十字繍などがみられる。文様表現のモチーフとして伝統の信仰観念に影響を受けた対称性を持つ蛇文様や、パイワンの影響を受けた宇宙神文様、壷の文様などが挙げられる。

またルカイの伝統文様として知られる連続の菱形紋や十字八角星型連続紋などもある。そのほかに漢民族や平埔族の影響と推測される万字連続紋や植物紋もある。また生活の道具を反映する酒杯や櫛なども見られる。

5-2 七佳式

伝統服装に使われる技法は、主にガラスビーズ玉を使用し、布の上で文様を刺繍する。文様を細部まで表現できることが特徴である。文様表現のモチーフとして伝統の信仰観念に影響を受けた蛇の文様は、霧台式と非常に酷似しており、両族の古来の文化が相似していたと窺える。

一方、太陽紋の表現には、星型や光が放射する丸型や半円形などが見られる。パイワン族とルカイ族は昔から同じ太陽に対する信仰観念があるといわれていたが、今回の調査においては、伝統服装に太陽紋がみられるのは七佳村のみであった。また人像紋の表現は霧台より七佳のほうが多かった。表現の種類は、古来の信仰観念に影響を受け継いだ宇宙神の姿や、階級を表す全身の人像紋、生活の風景を反映する連続人像紋、祖霊と一体化になるなどの文様が見られる。

一方、刺繍の表現は霧台式と同じく直線繍や十字繍の技法が使われ、主に袖口に刺繍されるため、線型で表現するところは霧台の面型表現と異なる。表現のモチーフとしては古来信仰にみられる壷と漢民族や平埔族にも使われる植物文様がある。

以上見てきたルカイ族やパイワン族の衣服の形式と文様は、華麗さや優雅な趣を表現しているだけでなく、深い文化、歴史、宗教的な意義をも含んでいるのである。私たちはこれらの文物を鑑賞する際、一歩進んでその背後にある文化的意義をさらに理解することができたなら、民族や土地に対する認識が深まるであろう。


 

 HOME

 page top