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図26 見守り、促し、支える家の概念図

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図26 見守り、促し、支える家の概念図

5. おわりに

高齢者が、認知機能が低下しても自宅でできるだけ長く住み続けることができるためには、低下した認知機能(記憶や判断)を支援する機器やシステムが必要となる。この支援は、当事者の行為を代償してしまうのではなく、見守り、促すことが機能低下を防ぐ意味から重要である*9(図26)。しかし、火災や盗難などの被害からは守らなくてはならず、個々の行為の危険度や重要度に応じた柔軟な対応が、時間帯や状況に応じて提供できなくてはならない。

認知機能が低下した状態でも使用できる機器とは、操作方法や機器の状態が容易に理解でき、複雑な思考プロセスを経ずに直感的に判断できることが重要であると思われる。カロリンスカ病院の作業療法室やクララメラ・テクニカルエイドセンターに展示していた機器類には絵文字や写真を用いて情報提示しているものや、音声ガイド付きのものが見られた。このような視点は、小児から高齢者までの世代を超えて使いやすさを追求するユニバーサルデザインとして捉えるべき点である。実際、電子音だけで報知する製品よりも音声ガイド付きの製品の方が多くの人にとってわかりやすく使いやすいものになっている。

2008年度は先進事例の調査と、訪問実態調査のための調査表作成に留まった。2009年度以降は、軽度認知症者あるいは早期認知症者への訪問調査を重ね、より多くの知見を得るとともに、問題解決のための技術開発とフィールドテストを重ねる予定である。

注・引用文献

*1―
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpax200701/b0040.html:厚生労働省発行「平成19年度版厚生労働白書第2章第1節の1「医療をめぐる環境変化」、2008(アクセス日:2009年9月1日)
*2―
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/07/dl/h0710-1a.pdf:厚生労働省「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」報告書、p27、2008 (アクセス日:2009年9月1日)
*3―
http://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2008/yoshi20080314.pdf:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)の要旨」、p4、2008(アクセス日:2009年9月1日)
*4―
訓覇法子:スウェーデン人はいま幸せか、日本放送出版協会、p214、1991
*5―
久塚純一、岡沢憲芙編:世界の福祉、早稲田大学出版部、pp2-26、2001
*6―
sofia Starkhammar and Louise Nygård: Using a timer device for the stove: Experiences of older adults with memory impairment or dementia and their families, Technology and Disability 20 (2008) 179-191, IOS Press
*7―
安田清:もの忘れを補うモノたち、訪問看護と介護 Vol.13 No.1 p56-61、200
*8―
LOUISE NYGARD: How can we get access to the experiences of people with dementia?, Scandinavian Journal of Occupational Therapy, 2006; 13: 101-112
*9―
相良二朗:軽度認知症者の自立生活を支援する「うながす家」の提案、日本福祉のまちづくり学会第12回全国大会発表概要集、p206-209、2009

(2008年度芸術工学研究所プロジェクト研究採択課題)



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相良二朗:軽度認知症者の自立生活を支援する「うながす家」の提案、日本福祉のまちづくり学会第12回全国大会発表概要集、p206-209、2009