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2.兵庫県立東はりま特別支援学校の新設

学校教育法が平成19年度に改正施行され「特別支援教育」が位置づけられ、旧盲・聾・養護学校は特別支援学校に改称された。それに先立ち兵庫県教育委員会は平成18年度に、「兵庫県特別支援教育推進計画」を策定し、兵庫県内の特別支援学校(旧盲・聾・養護学校)の児童生徒数の増加に対応するため、特別支援学校を新設する計画を立てた。特に播磨町が位置する東播磨地域では、稲美町にある特別支援学校に定員の約2倍の生徒が通学し、学校新設が急務となっていた。そのため、兵庫県教育委員会では加古川市内に特別支援学校を新設することを構想していたが、用地取得の制限等により難航していた。その様な中、旧北小学校が廃校となっており、兵庫県教育委員会は平成19年7月に、当初の構想を変更し播磨町内の旧北小学校施設を利用し県立特別支援学校を設置することを検討した。

また、兵庫県教育委員会は、「兵庫県特別支援教育推進計画」の中において「地域における支援体制の整備」として「地域特別支援連携協議会の設置」と「地域単位での広域支援ネットワークの整備」を位置づけた。前者の「地域特別支援連携協議会の設置」は、特別支援学校が地域での特別支援教育の推進と充実において、センター機能を果たすことを目的としており、後者の「地域単位での広域支援ネットワークの整備」は、教育、福祉、医療、労働等の関係機関との広域支援ネットワークをつくることとしている。この2つの実現には関係者の合意形成が必要な点や専門職能を持つ人材の育成など課題が多いと考えられる。特に後者については、特別支援学校単体ではネットワークを構築しづらい点が予想され、地域の側でネットワークを構築し、特別支援学校との協働体制を確立することが考えられる。

一方旧北小協議会は、活動の柱に「地域福祉」を掲げ、障害者にとっても住みやすい地域づくりを目標としており、播磨町内に特別支援学校が設置された場合、特別支援学校と連携・協力関係を築くことによる活動の相乗効果を期待した。また兵庫県教育委員会では、学校教育法改正後の県内最初の新設校となる播磨町内の特別支援学校に地域との連携を前提とする実験要素を盛り込むこととした。

旧北小協議会では地域の教育/学習環境の向上の可能性についても検討した。旧北小協議会と特別支援学校の協働による相補関係を築くことによって、図5に示すように地域の教育/学習の環境が拡充すると考えた。住民の教育/学習の段階として「就学前」から「小学校」、「中学校」、「高等学校」、「大学・短大」、「卒業後」、「退職後」があり、日常生活を過ごす場として「家庭」、「学校」、「企業等」、「地域社会」がある。近年、既存の学校や企業等の職場を補完する場としての「地域社会」の価値が見直されているが、旧北小協議会はこの「地域社会」の核を担うことを意図し、設立されている。特に特別支援教育(障害児教育)において、「地域社会」の核を担う旧北小協議会が存在することにより、特別支援学校が目指す「地域単位での広域支援ネットワークの整備」の機能を補完することが考えられる。

このような協働による相乗効果を期待し、平成21年度に「東はりま特別支援学校」の高等部が開校し、高校1年生約30名が入学した。平成23年度に小学部、中学部も開校し、完全開校する予定となっている。

図5.地域の教育/学習の環境

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図5.地域の教育/学習の環境

しかし、東はりま特別支援学校を設置する際に、既存の旧北小学校校舎の床面積では足りず、校舎を増築する必要性が出てきた。旧北小学校は40人学級が学年2学級ある全12学級の校舎であるが、小学部から高等部まで擁する東はりま特別支援学校は6人学級が全25学級必要であり、その他に訓練室等の特別教室が必要になるため、既存校舎のほぼ倍の面積が必要になる。不足する床面積については、既存校舎の北側に新校舎を建設、普通教室を中心とした床面積を確保し、既存校舎では職員室や特別教室等を確保することが必要となった。そのため、当初旧北小協議会の活動場所として考えられてきた旧北小学校校舎がすべて東はりま特別支援学校となり、旧北小協議会は活動場所を失う可能性が出てきた。

これに対し兵庫県教育委員会では、先に設立されていた住民主導のまちづくり組織である旧北小協議会を尊重し、学校敷地内に代替施設となる600m2規模の「(仮称)交流センター」を建設し、旧北小協議会の活動場所を確保することとした。図6の様に、平成22年度末には改修した既存校舎、耐震補強した既存体育館、新築校舎、交流センターが完成する予定となっている。

図6.東はりま特別支援学校の完成予想図

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図6.東はりま特別支援学校の完成予想図

この交流センターの管理運営は旧北小協議会に委ねる予定であり、旧北小協議会の設立主旨の大部分を維持し地域づくり活動を行えるようにしている。また、交流センターが東はりま特別支援学校の敷地内に立地することから、交流センターを管理運営する旧北小協議会が東はりま特別支援学校に対する地域の対応機関として役割も担うことが可能となる。

    

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