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2 本学における英語科目開講状況の変遷とカリキュラム改訂の準備作業

本章では、本学英語教育の移り変わりを概観するべく、現在までの英語科目開講状況の変遷等について述べる。

2-1 開学から大学完成年度まで(1989~1992年度)

1989年4月の開学より1992年度までは、第1外国語として英語I・II・IIIがそれぞれ1~3年次の必修(I・IIは4単位、IIIは2単位)とされ(*11) 、4単位の英語I~IIは週2回授業があった。

専任教員3名に非常勤講師を加え、多彩な講義が開講されたが、共通の授業目的として(以下要約)、

  • 英語I:専門教育履修に必要な、基本的英語力養成を目的とし、理解力と運用力を高めるため、講読・ヒアリング・作文・会話などの演習を行う。
  • 英語II:より高度な教材を用いて、総合的で弾力的な英語力と、多元的なものの見方を養う。
  • 英語III:相当英語力(語彙力・構文力)があるという前提で進め、テクニカル・ライティング等も指導する。

等が挙げられていた。

「英文読解」「英作文」のような具体的な科目名は冠されていないが、シラバスを見れば担当教員により「読む・書く・話す」のウエイトが異なっていることが看取される。英語I~IIではテキストを講読しつつ英作文や英語発表の演習を行う授業が多く、英語IIIでは作文力が重視されていた。

また、3年次の選択科目として通年2単位の英語IVが開講され、デザイン企画や学会発表を想定したプレゼンテーション演習や、文学作品を鑑賞する授業が用意されていた。

2-2 デザイン教育研究センター設置と教養分野科目の再編(1993~1995年度)

開学後最初の卒業生を送り出す完成年度を経て、開学5年目の1993年度には、開学当初の「一般教育」・「共通専門」の基礎教育二領域を「教養分野」として再編、新設の「デザイン教育研究センター」が同年に設立された大学院の基礎共通科目をも含めて所管するカリキュラム改革が実施された。

同年度から、英語は年次指定のない週1回の通年科目(各2単位)として英語I~Vまでが開講され、フランス語・ドイツ語と合わせて10単位以上の履修が選択必修となった(*12)。この時から全担当教員共通の授業目的が記載されることはなくなり、科目が細分化されて、時事英語や英会話、英文法・英作文に特化した内容のシラバスが登場している。英語IV~Vではテクニカル・ライティングが重視されていた。

1995年度には英語II~VがそれぞれA/B(英語IIIのみA~C)に分割され(それぞれ引き続き通年2単位)、英語IIは英作文、英語IIIは読解、英語IVは英会話(Bではプレゼンテーション含む)、英語Vはテクニカル・ライティングに特化したメニューに整備された。

なお1994年度より英語科は専任教員2名体制となっている。

2-3 開講科目の半期化・細分化(1996~2005年度)

1996年度には、英語・フランス語・ドイツ語・日本語(留学生向け)のすべての科目が半期開講2単位に改められ、見掛け上の開講科目は英語I~IXまでそれぞれにA/Bがある計18科目に急増したが (*13)、英語についてはAからBと続けて履修することが望ましいとの注意事項が付され、通年開講に準じた扱いになっている。

複数の担当教員によって力点は若干異なるが、基本的に英語I~IIは基礎・初級の総合英語で、IIIは英作文を中心としている。IV以降は1名の教員により担当され、IVは小説鑑賞、Vは英文読解と語彙力強化、VIは時事英語、VIIはリスニングとディクテーション、VIIIは英語コミュニケーション、IXはテクニカル・ライティングに特化していた。なお担当教員の異動により、1997~98年度の英語VII~VIIIは海外事情や異文化コミュニケーションについてのテキスト講読中心となり、また1997年度には「論文調の英文を読む」英語Xが追加された(*14)。

1999年度には、科目名が内容に応じた名称を付す形に改められた。すなわち、総合英語A/B、英作文A/B、英文読解A/B、英語圏文化研究A/B(内容は関連テキストの講読主体)、文学作品鑑賞A/B、英語コミュニケーション、時事英語、学術英語、英語表現演習(内容は英作文演習)が開講(それぞれ半期2単位)されることとなった(*15)。

2001年度には英語表現演習が廃され、それまで日本人講師が担当していた英語コミュニケーションは、初級・中級それぞれA/Bの4科目に分割、ネイティブスピーカーを担当講師(非常勤)とし、以後現在に至るまで「ネイティブ英語の時間」として定着している。

2002年度には英語圏文化研究A/B・文学作品鑑賞A/Bが廃止、学術英語は英語特別演習に改称、また上級クラスとして外書講読を想定した外国語特別ゼミナール(ゼミ形式で半期開講2単位)が開講(*16)されたが、2003年度は休止、2004~05年度はTOEIC対策演習に内容を変更して開講されている。また英語コミュニケーション中級A/Bは2005年度は不開講とされた。

なお2000年度より、英語科は専任教員1名のみの体制となり、現在に至っている。

2-4 先端芸術学部開設に伴う基礎分野カリキュラム再編と英語科目の大整理(2006年度~)

2006年度、先端芸術学部の開設にあたって基礎分野科目のカリキュラムが再編され、語学についても本稿が執筆された2009年度まで続くシステムに改められた。

すなわち、英語以外の語学(*17)についてはそれぞれ初級I・II、中級I・IIと名称を改めたが「準通年型」の体系を維持する一方で、英語は総合英語・英作文・英語コミュニケーション・英語演習の4科目(それぞれ年次指定なし・半期開講2単位)の4科目へと大幅に整理した上で、以上の外国語科目に「日本語文章作成」を加えた「リテラシー(語学)」科目につき、8単位を全学生必修とした。(*18)

2-5 カリキュラム改訂の準備作業-語学「コアタイム」の導入と「自己診断テスト」の実施(2009年度)

2-4に示した2006年度の科目構成は本稿執筆時まで変更されていないが、2010年度の学科改組とカリキュラム改訂を先取りする形で、2009年度の時間割編成時に語学科目の配置換えを行い、月曜・火曜の午前中を「コアタイム」(筆者による仮称)として履修者の多い「総合英語」「英作文」を集中的に開講することで、学生が他の科目との衝突を気にせず履修できるよう配慮しつつ、将来的な開講科目変更時の混乱の最小化を目指した。

また、担当教員からの経験に基づく所見(3-2-1を参照)を裏付ける学生の語学力データ収集のため、2009年度入学生に対し、入学後のオリエンテーション期間中に「自己診断テスト」を実施した(*19)。前章で要約した小講義は、その講評として行われたものである。

テストの結果は、筆者を含む英語科講師陣の経験論を概ね裏付けるものであった。1章で要約したとおり、多くの学生が中学・高校英語の復習を必要としているが、その一方で、突出した英語力を持つグループの存在も確認された。これについては4章で考察する。


 

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第2外国語としてフランス語Iまたはドイツ語Iの4単位が必修。
環境デザイン学科(現・環境・建築デザイン学科)は12単位が必修。2ヶ国語以上を選択することが望ましいとされた。
語学科目について、環境デザイン学科は18単位、その他の学科は10単位の履修が必修で、引き続き2ヶ国語以上の選択が望ましいとされた。
1998年度は不開講。
英語以外の語学科目としては中国語が追加された。なお語学科目全体で1999年度は12単位(環境デザイン学科)、8単位(工業デザイン学科プロダクトデザインコース=現・プロダクトデザイン学科)、10単位(視覚情報デザイン学科=現ビジュアルデザイン学科ならびに工業デザイン学科ファッションデザインコース=現・ファッションデザイン学科)が必修、2000年度以降は視覚情報デザイン学科が10単位、他学科は8単位以上が必修となった。
英語の他フランス語で開講(2003年度まで)。
ハングルが新開講、ドイツ語は廃止。
2005年度まで『LEARNING GUIDE』に記載のあった「2ヶ国語以上を選択して履修することが望ましい」との注意事項は削除された。
筆者の収集した情報に基づき学内で検討の結果、NPO法人英語運用能力評価協会(ELPA)のACE Placementテストが使用された。 http://english-assessment.org/products/test/placement.html