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2.研究の方法

本研究は、到達目標である(1)~(4)の4項目に従って次のように研究を進める。

(1)シーボルト達が評価した瀬戸内沿海景観および土地利用の把握を目的とした文献調査

瀬戸内沿海景観に関する記述は、ケンペル、朝鮮通信使、シーボルト、リヒトホーフェンらによって残されているが、その中でも特に詳細な風景を記録しているドイツ人医師シーボルトの著書『日本』『江戸参府紀行』『シーボルト日記』*1 を取り上げ、彼が巡った瀬戸内海の航路と、その際に評価し記録した固有価値を持つ瀬戸内各地の文化景観の抽出を行う。同時に、シーボルトの記録を補完する目的で、シーボルト以前、17世紀に江戸参府を経験したドイツ人医師ケンペルの『日本誌』『江戸参府旅行日記』*2 、18世紀に江戸参府を経験した朝鮮通信使制述官・申維翰(シン・ユハン)の『海游録』*3 、明治維新直後に3度に渡り来日し日本を調査したドイツ人地理学者リヒトホーフェンの『支那旅行日記』*4 にも着目して調査を行い、シーボルト前後の瀬戸内海の固有価値を把握する。これらの文献に加え、明治時代に発行された地形図も利用して調査を行う。 具体的な調査項目は、1)沿海景観、2)土地利用と住居集合、3)営みと生活文化の3特性で、この3特性から、シーボルト達がみた瀬戸内海の「沿海景観」と「土地利用」を把握する。

(2)沿海景観および土地利用の現状把握と固有価値を持つ地域に焦点を当てた現地詳細調査

船舶を利用して、神戸港第一突堤から小倉港までの瀬戸内沿海諸地域を巡り、海を視点場とした各地域の実態把握を行うほか、シーボルトをはじめとしてケンペル、申維翰、リヒトホーフェンらがみたであろう風景について、現在の姿を確認する。そのため調査航路や調査場所は、予備調査に加えて、シーボルト達が用いた航路も参考にして選択し、それらの地域において1)沿海景観、2)土地利用と住居集合、3)営みと生活文化の3特性について調査を行い、現在の瀬戸内海の「沿海景観」と「土地利用」を把握する。これらの調査に加え、平成年代の地形図、現在のgoogle earthも利用して調査を行う。

また、近年の民俗学者宮本常一による瀬戸内沿海文化史の既往研究*5 にも着目し、主に土地利用の観点から現状との比較を行う。

(3)現地調査・文献資料調査を通した沿海景観および土地利用の歴史的変遷の把握

(1)文献調査、(2)現地調査において得られた1)沿海景観、2)土地利用と住居集合、3)営みと生活文化の特性について、シーボルト達の時代と現在を比較し、瀬戸内海の「沿海景観」と「土地利用」の変遷を把握する。

また、現在に繋がる瀬戸内海の景観・土地利用の変遷を把握するために、戦前から高度経済成長期まで日本各地をフィールドワークし続けた民俗学者宮本常一の『瀬戸内海の研究(一)』『私の日本地図』(瀬戸内海の記述がされているのは、4、6、9、12巻)*5 も参考にする。

(4)瀬戸内沿海景観の固有価値の再評価

(1)、(2)の文献調査と現地調査で得た、瀬戸内海の1)沿海景観、2)土地利用と住居集合、3)営みと生活文化の特性と、それらを(3)比較・考察して瀬戸内沿海域の現状を把握し、瀬戸内沿海景観の固有価値の再評価へと繋げる。


 

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本研究で利用するシーボルトの瀬戸内海に関する著書は次の7冊である。 1)フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト 中井晶夫他訳:日本 第1~3巻、図録第1~2巻:雄松堂出版:1977~1978 2)ジーボルト 斎藤信訳:江戸参府紀行:平凡社:1967 3)シーボルト 石山禎一他訳:シーボルト日記:八坂書房:2005
本研究で利用するケンペルの瀬戸内海に関する著書は次の3冊である。 1)ケンペル 斎藤信訳:江戸参府旅行日記:平凡社:1977 2) エンゲルベルト・ケンペル 今井正訳:日本誌 上・下:霞ヶ関出版:  1989
本研究で利用する朝鮮通信使の瀬戸内海に関する著書は次の1冊である。 1)申維翰 姜在彦訳:海游録:平凡社:1974
本研究で利用するリヒトホーフェンの瀬戸内海に関する著書は次の2冊である。 1)リヒトホーフェン 海老原正雄訳:支那旅行日記 上・下巻:慶応出版社:1943
本研究で参考にする宮本常一の瀬戸内海に関する著書は次の5冊である。 1)宮本常一:瀬戸内海の研究:未来社:1965 2)宮本常一:私の日本地図 4、6、9、12:同友館:1968~1973