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3-1 平成18年度の取り組み

3年間にわたるプロジェクトの初年度に行なったのは、「播州織工房館」の開設である。改修対象となった建物は、西脇市内にいくつか残る「のこぎり屋根」を特徴とした播州織の全盛期を象徴する木造の機織り工場のひとつで、改修前には駐車場として仮利用されていた(写真26)。ここを今回、播州織などを生かした工芸品の制作場として整備することになった。多くの天窓を有する広々とした空間は、様々なイベントにも活用できると考えられた(写真27)。

写真26 旧織物工場「丸貞」改修前の状況

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写真26 旧織物工場「丸貞」改修前の状況

写真27 旧織物工場「丸貞」改修前の内観写真

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写真27 旧織物工場「丸貞」改修前の内観写真


播州織工房館の改修において、当初に想定された主要なデザイン課題は、次の通りである。

○工芸品の制作販売がおこなえる15程度の作業ブースを設置する。

○ファッションショーなどのイベント用の仮設ステージを設置可能とする。

○西脇市の伝統的地場産業としての播州織の象徴でもある「のこぎり屋根」の工場の雰囲気や力強さを出来る限り保存する。

○工房館自体が播州織の展示場となるよう、産元から提供された播州織の生地を、内部の空間構成や家具等に利用する。

○一般の人々と工房内各ブースの出店者とが、気軽に交流できる場を設ける。

このような条件を前提に、下(写真28)のようなモデルを制作し、西脇商工会議所での打合せを通して(写真29)デザインの検討を進める一方で、構造的な補強やイベント開催時等の安全性能について、地元の専門業者に必要な対策の検討を依頼した。

写真28 播州織工房館デザイン検討用モデル

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写真28 播州織工房館デザイン検討用モデル

写真29 商工会議所での打合せ

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写真29 商工会議所での打合せ


その結果、予定されていた事業費の大半は、構造補強や安全対策のために費やされてしまうことが判明し、残された予算内で可能な最低限の内装工事を行う方針に切り替えた。工房館内の水回りやステージ、作業ブースの配置等については、概算見積算出用に作成されていた単純な構成の素案を基本として、壁や床の形態と位置の調整、部材の納め方の指定、壁材の選択、照明の決定等を行い、それによって、織物工場が持つ大きな空間の力強さや、木材と鉄骨とが組み合わされた小屋組と天窓、しっくい塗りの真壁等の素材感が、より引き立てられるような工夫を行うことに専念した。工事は2006年12月12日から約4ヶ月間で行われたが、細部に関しては現場での職人の方々との打合せを通して最終的なデザインを決定した(写真30)。

結果として、実現されたデザインは当初案とは大幅に異なるものとなったが、施工性を重視した直線的なデザインによる、すっきりとした空間を作り上げることができた(写真31)。また、施工のプロセスを通して、デザインについての考え方を地域の人々との間で共有できたことも、もうひとつの大きな成果であった。

写真30 施工時の様子

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写真30 施工時の様子

写真31 内装工事完了時の様子

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写真31 内装工事完了時の様子


    

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