4-2 第二次試作
第二次試作では、触知できる線が視覚的にも存在し、線が交差した位置に石を固定できる方法を検討した*3。石を動かなくする素材として微小な吸盤形状が表面に加工されたシートの採用も検討したが、量産化には適していないと判断し、線の凸が石の溝に勘合し、さらに盤面の穴に石のピンが差し込まれる方式とした。(図7)
試作は、ABSの板に碁石の直径よりも少し大きい(22.5mm)間隔に碁盤の目状に幅1.1mmのプラスチック片(メタクリル樹脂製)を嵌め込み粘着する工法とした。量産時には射出成型で製造することを前提としている。(図8)
線が交差する位置には直径2.6mmと1.6mmの2段の穴を開けた。さらに、天元と星の位置には穴の周辺に45度の凸を形成し、触知を容易にするとともに、晴眼者に対して天元と星の位置を視認しやすくした。
盤の周囲には、4,7,10,13,16の位置に盤側面と上面に小さな突起を形成し、天元と星の位置を触知できるようにした。これらの凸の大きさは天元位置である中心部(10路)を最も大きくし、星(4路と16路)をその次の大きさに、7路と13路はより小さなものとした。
碁石は片面が平らな形状とし、平らな面に4本の溝を放射状に成型し、盤の突起に勘合するようにした。45度で溝が入っているため、嵌め込むときに石を回す動作は容易になる。石の裏面中央には直径1.5mmと2.5mmの2段のピンを設け、盤の穴に合わせている。黒石には表の中央に直径1mm高さ0.5mmの突起を設け、色の違いを触知できるようにした。試作品はシリコンゴム型を用い、ウレタン樹脂を注型して制作した。(図10、11、12)
碁盤状の突起に碁石のピンを沿わせて動かすことで、碁石を目的の穴へ誘導することができ、正確かつ円滑な打碁動作を可能とした。2段の穴とピンは碁石が傾いた状態でも穴へ差し込むことができ、碁石を取る際の抵抗も少なくなる。凸線と穴の組み合わせにより、交点以外への打碁は不可能となり、碁石は盤上の目的位置に整然と整列することになる。
第二次試作は、2008年2月に大阪で開催された「大阪商業大学総合経営学部公共経営学科第3回公開シンポジウム:囲碁と人間の幸せ」、2008年5月に東京で開催された「世界アマチュア囲碁選手権戦東京大会」(図13)、2008年6月に韓国のソウル市で開催された「国際障害者囲碁大会」に展示公開し、視覚障害のある棋士による試用評価や参加者からの評価を受けた。(図14)
9路盤、19路盤ともに概ね良好な評価を得たが、19路盤ではより一般の碁盤への接近が求められた。これは、晴眼者との対戦において、特別な用具を使用したことを勝敗の原因にされたくないという理由であった。
第二次試作をもとに実用新案登録を行い、実願2008-003180の承認を受けた。