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5. 結果と考察

第一次試作から第三次試作までの経過と結果を報告した。特に第三次試作においては、碁石成型時の樹脂収縮を考慮して盤上のピン差し込み穴を設計したものの、嵌合の甘さが指摘され量産試作設計の課題として残った。全体としては晴眼者も視覚障害者も対等に対局ができるとともに、交通機関の中での使用や、上肢に震えなどがある人の使用にも適していることが明らかとなった。また、80度程度傾斜させても使用でき、碁石が整然と整列することから棋譜解説などにも適していると考えられる。碁石が動きやすいという問題点は、金型の微修正にて解決が可能な問題であり、当初の目標であるユニバーサルな碁盤の開発はほぼ達成することができた。

2008年10月、オリンピックとパラリンピックが終了した北京において、「第1届世界智力運動会(1st World Mind Sports Games)」が開催され、チェス、チェッカー、コントラクトブリッジ、碁、およびシャンチー(中国将棋)の5種目の競技に世界100以上の国から3000名を超える選手が参加した*4。この大会は非公開であったが国際囲碁連盟のご厚意により見学する機会を得た。この大会は、体力を競うオリンピックに対して、知力を競う競技会という位置づけであり、パラリンピックとの関連はなく、障害のある競技者の姿は見られなかった。知力を競うゲームこそ、使用する用具次第で障害を越えた対等な競技を行うことができる。オリンピックと「もうひとつのオリンピック」としてパラリンピックが開催されているが、知的オリンピックは障害のある人も無い人も一緒に競技ができる可能性がある。2012年にはロンドンオリンピックにあわせて、2016年にもオリンピック開催地にて、第2回、第3回のWorld Mind Sports Gamesが開催されると思われる。これらの大会では、著者らが開発した碁盤を用いて、視覚に障害のある選手が参加できることに期待したい。


 

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第1回ワールドマインドスポーツゲームズ(日本棋院HP) http://www.nihonkiin.or.jp/event/wmsg2008/(アクセス日:2009.09.01)