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1-3 和田家の玄関と客間における光と陰の分布

合掌づくり住宅において、仏間や客間など格式の高い空間は一般的に日当りがよく、明るい方角に配置するとされる*3。和田家の場合、西面の北側に式台付きの玄関があり、玄関の間、仏間、客間、奥の客間へ直接通じる。この玄関は、従来には来客や主人が通る出入り口となっていたが、現在、普段は閉められている。

本調査においては、和田家の玄関の間と客間、奥の客間の床面における照度を計測し、その光環境および色彩との関連を考察した。

測定機器:
コニカミノルタの照度計CL-200(単位:lx)
測定時の気候:
雨時々晴れ。
測定時間:
2008年7月18日の10:00、11:30、14:30、16:30。
測定場所:
玄関の間、客間、奥の客間の床面縦横88cmごとの場所(畳の幅の長さ)計80カ所、
玄関の間、客間、奥の客間の開口部の外側、計3カ所。
測定時の開口部の状態:
西面の玄関は閉じられ、北面の客間の障子は開いていた。

当日は雨時々晴れの気候であり、太陽光がきわめて不安定の中で行われたが、それぞれの時間帯における室内での自然光の分布状況を把握することができた。図2-図5は、西側の玄関の間、北側の客間、奥の客間における照度の分布を示したものである。その結果、以下のことが明らかになった。

1)
北側の客間と奥の客間は、外側の濡れ縁と回廊により直射光が入りにくくなっており、障子を開けているにもかかわらず、座敷の中まで入射される光は、照度が10lx以上に達するのが一畳ぐらいの面積にしか及ばなかった。特に奥の客間の床の間はつねに照度が1lx以下となっており、陰影の中にある。
2)
玄関の間の光は天気の変化や時間帯により比較的大きく変化しており、特に夕方には西日が障子を透過して入射し、その広い領域において照度10lx以上となっており、その光はさらに仏間までに届いている。

このように、合掌づくり住居は、直射日光を室内に入れない工夫がされており、開口部に設けられた濡れ縁や回廊などの反射作用、和紙の透過作用を利用し、柔らかい明かりを取り入れる。また、室内空間には光と陰の変化をつくり、空間に変化や深みを醸し出す。

図2 午前10時頃の照度分布

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図2 午前10時頃の照度分布

図3 午前11時30分頃の照度分布

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図3 午前11時30分頃の照度分布


図4 午後2時30分頃の照度分布

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図4 午後2時30分頃の照度分布

図5 午後4時30分頃の照度分布

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図5 午後4時30分頃の照度分布


    

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飛越合掌文化研究会(角竹弘、高田善太郎、長谷川和衛)、『世界遺産の合掌造り集落―白川郷・五箇山のくらしと民俗』岐阜新聞社、1996、p95