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2-2 台湾におけるアジアンデザイン調査候補地の視察及び検討

日・中・韓3大学の国際交流に2009年度より新たに加わる予定の雲林科技大学の曾啓雄先生とともに、次年度以降の国際共同プロジェクト(アジアンデザインに関するフィールドワーク)において台湾・台中エリアの調査対象地とする可能性のある場所について、2008年12月21日~25日の日程で予備調査を行った。

2-2-1 調査メンバーと調査日程

1)
調査メンバー
大田尚作、黄國賓、齊木崇人、相良二朗、曽和英子、田頭章徳、早川紀朱、松本美保子、山之内誠(以上、神戸芸術工科大学・五十音順) 曾啓雄(雲林科技大学)
2)
日程
12/21
午前:日本を出発。
午後:石壁染織工芸園区(苗栗県南庄郷東河村21鄰石壁)において、台湾原住民・泰雅族の伝統的文様及び織物の技法等の視察。

写真6 泰雅族の織物技法のレクチャーを受けるメンバーたち(石壁染織工芸園区)

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写真6 泰雅族の織物技法のレクチャーを受けるメンバーたち(石壁染織工芸園区)

写真7 泰雅族の衣装を纏い染織技法の解説を行う林淑莉氏(石壁染織工芸園区)

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写真7 泰雅族の衣装を纏い染織技法の解説を行う林淑莉氏(石壁染織工芸園区)

12/22
午前:九族文化村(南投縣魚池郷大林村金天巷)において、台湾の原住民の伝統的住居建築様式や、様々な装飾技術・文様について視察。
午後:埔里廣興紙寮(南投縣埔里鎮鐵山里鐵山路)において、伝統的な紙漉きの技法および紙を使用した伝統工芸品およびそれらの体験学習施設を視察。
夕刻:鹿港老街(鹿港古蹟保存区/彰化縣鹿港鎮)の歴史的町並みの視察。

写真8 九族文化村 入口

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写真8 九族文化村 入口

写真9 九族文化村の復元民家

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写真9 九族文化村の復元民家


写真10 廣興紙寮の工房

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写真10 廣興紙寮の工房

写真11 鹿港の街並み

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写真11 鹿港の街並み


12/23
午前:豊原文化センター(台中縣豊原市圓環東路)において、台湾原住民の染織工芸品に関する希少資料を視察。
午後:国立台湾工芸研究所(南投縣草屯鎮中正路)において、台湾のさまざまなデザイン分野の伝統工芸に関する研究及び研修施設を視察。

写真12 排灣族の衣装の伝統文様(豊原文化センター所蔵)

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写真12 排灣族の衣装の伝統文様(豊原文化センター所蔵)

写真13 国立台湾工芸研究所

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写真13 国立台湾工芸研究所


12/24
午前:国立故宮博物院(台北市士林区至善路二段)において、台湾第一級の伝統工芸品を視察。
順益原住民博物館(台北市士林区至善路二段)において、台湾原住民の歴史と民族資料を視察。
午後:林本源園邸(台北市中山区南京東路三段)において、富裕な商人の歴史的な住宅建築及び庭園を視察。

写真14 林本源園邸の庭園

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写真14 林本源園邸の庭園

写真15 林本源園邸の庭園

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写真15 林本源園邸の庭園


12/25
帰国。

2-2-2 台湾における国際共同プロジェクトの実施方法について

今回の視察旅行は、2005年度から2007年度にかけて3大学で行ってきた東アジアの文化遺産をテーマとしたフィールドワークを、台湾においても同様に実施することを想定したものであるが、現地視察を終えて調査メンバーと討議するなかで、いくつかの課題が浮かび上がってきた。

1)
調査のエリアについて
 当初は、交通の便が良く、故宮博物院の見学をプログラムに組み入れることで教育効果が期待できることなどから、台北周辺をフィールドにすることを検討していた。しかし、台北周辺には、古い町並みや建造物などのアジアンデザインに関するフィールドワークが可能な場所が少ないため、雲林科技大学の提案により台中エリアの視察・検討を中心に行った。
2)
訪問地について
 今回の訪問地は台湾におけるアジアンデザインの様相を知る上で大変興味深い場所ばかりであったが、プロジェクトの対象地とするには少々困難を伴う印象をもった。
 廣興紙寮や国立台湾工芸研究所は、特定分野の研修を行う上では非常に適しており、施設も充実していたが、フィールドワークには対応できず、また、環境・建築デザイン分野とは関係が薄い。逆に鹿港の町並みなどは、環境・建築デザインのフィールドワークとしては面白いが、内部までを詳細に調査可能な対象物があまりないので、他のデザイン分野のフィールドワークは難しいと思われた。
 一方、九族文化村は、建築に限らず工芸品、文様など、幅広い分野に先住民の豊かなデザイン感覚が表現されていて興味深かった。しかし、残念ながら基本的にオリジナルではなく復元的に造られた空間なので、フィールドワークの練習はできても、研究対象にはできない。
 今回の訪問地の中で、フィールドワークの対象としてもっとも有望だと思われたのは、林本源園邸であった。19世紀に造られた富裕な商人の邸宅・庭園であるが、広大なうえに装飾物が豊かであり、様々なデザイン分野の要素が存在している。ただし、すでに文化遺産として保護されており、一定水準の先行研究が蓄積されているため、研究対象とするには困難が予想された。

2009年度以降の国際共同プロジェクトについては、上記の視察の結果を踏まえ、継続的に検討を続けることにした。特に、雲林科技大の曾教授を中心に、台南地区も視野に入れて調査地を再検討することとなった。

    

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