3-4 小さなセレモニーのためのドレス
作品名: | 小さなセレモニーのためのドレス Robe de petite cérémonie |
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リファレンスNO.: | 1969.15.5 |
グリフ: | Paul Poiret à Paris(No.14.368) |
制作年: | 1910年 |
素材: | シルクサテン(アンダードレス)、クレーポン(ドレス) |
色: | グリーン(アンダードレス)、クリーム色(ドレス) |
デザイン:(図5) |
ハイウエストに切り替えの入ったディレクトワール・スタイルのドレス。ビビッドなグリーンのトレーンをひくロング丈のアンダードレスの上に、クリーム色の薄く透るミモレ丈のドレスを重ねた二重仕立て。身頃続きの半袖のキモノ袖に、前後に続くキモノ風の深い打ち合わせ。ハイウエストの切り替え位置に金色の飾りリボンが付き、同色の総飾りを下げている。裾にも同じリボンの縁飾り。色と素材の使い方は典型的なポワレにおけるシンプルな「エレガンス」を現している。*1 |
構造:(図6,7) |
ハイウエストに切り替えを入れ、身頃とスカートの二部構成のドレス。肩線abに切り替えを入れず、前後が一続きになったキモノ袖の構造である。前後に続くキモノ風の深い打ち合わせcadに経地を通し直線でカットしている。スカートはわずかに裾が広がり、アンダードレスのスカートの裾はチェーンを入れトレーンをひいている。ハイウエストの切り換えには、裏地の身体に接する内側に、太いグログラン(*2、図8)がまつり付けられている。 グログランは前後に切り替えを入れた5枚構成、後ろ中心の「あき」には太いカギホックが留められている。切り替え線にはバレーヌ*3を通し、コルセットを胸下部分のみ切り取った「ミニ・コルセット」のような構造をしている(図9)。グログランは胸下からバストのトップにむけて下から押し上げるように着用されると思われる(図10)。 |
備考: | このタイプのキモノ袖とキモノ風の打ち合わせを持つドレスは、ポワレの代表的作品である「ジョセフィーヌ」や今回調査した「アフタヌーン・ドレス(Ref.1963.25.57)」と同じ構造をしている |
*1― | ポワレは「ペトロヌ氏の意見」のなかで女性的な優雅さのシンプルな表現として「毛皮の衿巻き、プリーツ、きれいに並べられた一列のボタン、サテンの縁飾り用リボン、留め付けたタブ、飾紐の切れ端、金の総、バックル、刺繍をほどこした小さな折り返し、レースの衿」を例に挙げている。 |
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*2― | グログラン(gros-grain):緯糸に太糸を用い、横畝の強い平織りの布、あるいはテープ。 |
*3― | バレーヌ(baleine):鯨のひげ。身体を矯正し、シルエットを作るためにコルセットなどに入れる。 |