3.ポール・ポワレの衣服デザインの構造

3-5 キュロット・ドレス

作品名: キュロット・ドレス(Robe à jupe culotte)
リファレンスNO.: No.1991.182.X
グリフ: Paul Poiret à Paris(No.28.886)
制作年: 1913年(春)
素材: シルク・モスリン(ドレス)、シルクサテン(アンダードレス)
色: グリーン(ドレス)、ブラック(アンダードレス)、ゴールド
デザイン:(図11)

図-11 トワール

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図-11 トワール

ハイウエストの切り替えのあるディレクトワール・スタイルのシルエットにキュロット・スカートがついたドレス。身頃続きのキモノ袖、キモノ風打ち合わせ、前後一続きの身頃構造などポワレの典型的な構造を持っている。また同時に、肩線とウエストにギャザーを入れて全体にゆったりとしたドレープとスカートの脇のスリットから足を出すハーレム・パンツ風のキュロット・スカートからはオリエンタリズムの影響も強く感じられる。

構造:(図12)

図-12 パターン

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図-12 パターン

ハイウエストに切り替えを入れ、袖は身頃続きのキモノ袖である。肩線から続いた袖中心線abに経地を通し、肩に切り替えを入れずに前後一続きの構造である。袖下に「襠」を入れ、細いキモノ袖に運動量を与えている。裾efが「わ裁ち」にされた前後が一続きのスカートは股下に布を通すというもので、西洋の衣服のカッティングにはなかったものである。脇線には縫い目を利用したスリットfgがあいている。ハイウエストの切り換えには、内側にグログランが付けられている。
備考: ポワレは1910年春、膝下で裾が極端に狭くなったホブル・スカート(hobble skirt)(フランス語では束縛を意味するjupe entraveée)を発表した。当時のファッション雑誌「La Mode Illustreée」誌には、よちよち歩きしかできない足を束縛するスカートと揶揄する記事が掲載された。翌年、ポワレは歩きやすさを考慮したキュロット・スカートをデザインし、「Illustration」誌に「女性にキュロットをはかせる4つの方法」と題したイラストを掲載した。1913年に制作されたこのキュロット・ドレスは、その中に示されたスリットあきに足を通すものである。

 



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