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8-2 各原形保存地区の整備内容

写真5 三木駅舎

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写真5 三木駅舎

[原形保存地区A] 三木駅舎と周辺施設及び線路の保存

1)三木駅舎の再生保存/「記念館1」としての活用

・バス停車場を兼ねた「ふれあい広場」のスペースを確保するため、三木駅舎は場所を移動して「記念館1」として再生保存する。再生保存の方法としては、(1)基礎から切り離して移動、(2)解体して元の部材を用いて再構築、(3)主要部を同一意匠としたものを新築、の3通りが考えられるが、予算及び技術面の検討を行った上で、最も合理的な工法を採用することとする。また、小規模な販売スペースの設置を検討する。

・「記念館1」の内部には、三木鉄道の歴史資料を常設展示する。また、ふれあいサロン(交流スペース)を設け、日常的な憩いの場とすると共に、企画展示等のイベントにも活用できるスペースとする。

・「記念館1」の一部はトロッコが通り抜けられるように改築する。三木駅舎の切符売り場を、そのままトロッコ利用の受付とチケット販売所として活用する。待合室にあたる部分から、トロッコが走り抜ける様子が見えるような空間構成とする。また、この部分は大扉で開閉できるようにし、トロッコの非運行時には、その収納スペースを兼ねることとする。

・三木駅周辺は、線路跡遊歩道の起点となる場所であり、案内板を設けると共に「記念館1」内にレンタサイクルの窓口を設けることも検討する。

2)車庫の部分保存/「記念館2」としての活用と大屋根の新設

・車庫の一部を「記念館2」として活用する。車両点検用のピットを残し、可能であれば、車両の台車部分や前面部分を再現し、点検作業の仕組みがわかる展示をする。

・「記念館2」を取り囲む形で大屋根を設け、その下を朝市等の開催場として利用する。大屋根の一部は原形保存された軌道を覆うようにして、そこをトロッコの発着場とする。

・「記念館2」の内部または大屋根の下の一部には、朝市の開催等を容易にするための収納スペースや水回り設備を設置する。


写真6 車庫

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写真6 車庫

3)出荷仕分け場の保存/「多目的休憩場所」としての活用

・現駐輪場は、刃物に代表される三木の工業製品等が出荷される際、貨物の搬送先別に仕分け作業が行われていた場所である。工業製品の輸送に三木鉄道が使われていた事を象徴する歴史的意義を有する建物であることから、多目的広場ゾーンに面する休憩場所として再生利用する。

・梁に書かれている貨物の搬送先を示す地名の文字や、レールを独立柱の基礎として用いた工法など、歴史的意義を有する詳細部分についても、丁寧な保存あるいは復元に努める。


写真7 出荷仕分け場

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写真7 出荷仕分け場

4)軌道の原形保存/「トロッコ走行路」としての活用

・三木駅構内の最も南側に位置する線路については、レール、枕木、砂利等をそのまま保存し、トロッコの走行路として活用する。

・トロッコは2人乗り程度の小さなものとし、バッテリーカー又はソーラーカータイプのものや、自転車タイプのもの等を導入することも考えられる。

・トロッコが「記念館1」をくぐり抜けて「ふれあい広場」から「多目的広場」まで、150m 程のコースを往復する情景をつくり出すことで、整備地区全体に活気を与えることができる。洗車場の跡もコースに変化を与える要素として保存活用する。

・ 三木駅構内の他の線路については、分岐部や保存された出荷仕分け場の前にあたる部分を、レールのみ保存して、かつて存在した駅の記憶を呼び起こす手がかりとする。トロッコ走行路以外のレールは、広場としての使用に支障をきたさないよう、広場の舗装材と同一面になるように埋め込むこととする。


写真8 三木駅構内の軌道

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写真8 三木駅構内の軌道

[トロッコの参考事例]

写真9 北海道美深町の事例

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写真9 北海道美深町の事例

5)その他の要素の保存と活用

・上記1)~4)の施設以外にも、三木鉄道に関連する要素については、その大小や設置時期の新旧にかかわらず、鉄道跡地であることのイメージを強化するのに役立つ限り、積極的な保存再生に努める。

・ポイントの切替小屋、信号機、踏切を構成する要素、旧式のレールを用いた車両止め、様々な標識等、そのままの位置で残すと支障がある場合には移動することも含めて、三木鉄道の歴史を楽しく学ぶことのできる、魅力的な風景づくりに活用する。


写真10 その他の要素

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写真10 その他の要素

写真11 別所駅現況写真

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写真11 別所駅現況写真

[原形保存地区B] 別所駅舎と周辺軌道の保全

・別所駅は、大正5(1916)年に播州鉄道三木線が開業した時の終点である。三木鉄道の歴史の上でも重要な場所であるため、古い木造駅舎とホーム及び別所駅周辺の軌道を産業遺産として、原形に近い状態で保存する。

・駅舎については、遊歩道沿いの休憩所として活用する。駅舎の中には、別所駅についての説明板や周辺の散策コース・サイクリングコース等の案内板を設置する。

・この地区に隣接する原形保存地区C では、隣接する軌道跡を用いたイベント等の開催も考えられるため、そのような機会にはイベント開催拠点としても利用できるよう、設備等を整備する。

・別所駅周辺の軌道については、レール、枕木及び砂利を原形のまま保存する。

・東方向からの遊歩道は、別所駅付近で駅舎の南側へと迂回し、正面入口から駅舎を通り抜けてホームへと至る。そして、ホームから伸びるスロープを経て、再び西方面へと伸びる軌道敷跡遊歩道に接続される。

・遊歩道の経路を駅舎を通り抜けるように設定することによって、駅舎内の案内や展示等を、遊歩道を利用する多くの人に自然に見てもらうことが可能になる。

・また、遊歩道が駅舎正面で他の道路と接続されることで、駅舎が軌道敷跡の遊歩道と周辺地域との接点としての役割を果たす。


図14 原形保存地区B 別所駅配置図

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図14 原形保存地区B 別所駅配置図

[原形保存地区C] 西這田~別所間の田園景観に隣接する軌道(レールと枕木又は枕木のみ)の保全

・この区間の軌道は三木市西部の特徴的な田園景観に隣接し、車窓からの四季折々の風景が人々の目を楽しませて来た。そのような記憶をたどる手がかりとして、この区間では1km近くに及ぶ軌道跡の広大な風景を、なるべく原形に近い状態で保存する。

・レールをそのまま残してその間を遊歩道として活用する案と、レールは撤去して枕木のみを残し、その上を歩けるようにする案の2案がある。

・レールを残す案が採用された場合には、原形保存地区Aで走らせるトロッコを一時的にこの区間に持ち込み、1km に及ぶ走行体験のイベント等を開催することも可能になる。


写真12 西這田~別所間の軌道現況写真

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写真12 西這田~別所間の軌道現況写真

写真13 石野駅現況写真

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写真13 石野駅現況写真

[原形保存地区D]

石野駅舎と周辺軌道の保全

・石野駅は、別所駅と同様、播州鉄道三木線が開業した時から開業した駅である。古い木造駅舎とホーム及び石野駅周辺の軌道を産業遺産として、原形に近い状態で保存する。

・駅舎については、遊歩道沿いの休憩所として活用する。駅舎の中には、別所駅についての説明板や周辺の散策コース・サイクリングコース等の案内板を設置する。

・石野駅周辺の軌道については、レール、枕木および砂利を原形のまま保存する。

・東方向からの遊歩道は、石野駅付近で駅舎の南側へと迂回し、正面入口から駅舎を通り抜けてホームへと至る。そして、ホームから伸びるスロープを経て、再び西方面へと伸びる軌道敷跡遊歩道に接続される。

・遊歩道の経路を駅舎を通り抜けるように設定することによって、駅舎内の案内や展示等を、遊歩道を利用する多くの人に自然に見てもらうことが可能になる。

・遊歩道が駅舎正面で他の道路と接続されることで、駅舎が軌道敷跡の遊歩道と周辺地域との接点としての役割を果たす。


図15 原形保存地区D 石野駅配置図

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図15 原形保存地区D 石野駅配置図

[原形保存地区E] 地形的特徴を有する切り通し景観及び軌道の保全

・加古川市との境の切り通し部分は、三木鉄道という土木構築物と自然地形との関わりが、最も象徴的に示された場所であり、上空を横切る水道橋とも組み合わされた独特な景観が存在している。

・この場所は、線路跡遊歩道の終点にもあたり、散策コースやサイクリングコースの目的地点ともなる重要な場所であるため、レール、枕木、砂利といった要素を原形のまま保存するとともに、歴史地理的な意義についての説明板、散策コース・サイクリングコース等の案内板等を設置する。

・下石野駅付近の築堤が地域の分断を解消するために撤去されると、この場所との間にレベル差が生じるが、歩きやすい階段等を設けて、アプローチしやすいように工夫する。


写真14 切り通し部現況写真

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写真14 切り通し部現況写真


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